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ミリ波のデータは、なぜリアルタイムでPCに届かないのか?

ミリ波レーダーの基本原理や自社製品への組み込みについては、これまでの記事でご紹介してきました。今回は一歩踏み込み、実際にミリ波を評価・開発し始めた方が最初に直面する「データ転送速度」という壁と、その乗り越え方をご紹介します。

 

 


 

こんな壁にぶつかっていませんか?

ミリ波レーダーの評価を始め、「距離・速度・角度は測れた。次はリアルタイムで動かしたい」という段階で、多くの方が同じ壁にぶつかります。

生データの取りこぼし

評価ボードから生データを出そうとすると、転送が追いつかずフレームを落としてしまう。

“後処理”しかできない

リアルタイムに描画したいのに、一度ファイルに保存してからでないと処理が始められない。

速くすると壊れる

転送を速くしようとすると、今度はパケットが欠落してデータそのものが壊れてしまう。

 

「センサーの性能は十分なのに、そのデータをPCまで届ける部分が足かせになる」
ミリ波を “見る” 段階から “使う” 段階へ進むとき、必ずと言っていいほど現れる課題です。

 


 

なぜミリ波は「データ転送」で詰まるのか

ミリ波レーダーは、複数の送信・受信アンテナが高速にチャープ信号を繰り返し、その 生データ(RAWデータ) を大量に吐き出します。

多チャンネル構成では、センサー〜処理系の間に 約9.6Gbps規模(例:2.4Gbps × 4ch)のデータが流れることもあります。この生データを 欠損なく・高速に PCへ届けられるかが、リアルタイム処理の成否を分けます。

 

多チャンネル・ミリ波の生データ帯域 約 9.6 Gbps
これを1G Ethernetで送ろうとすると、帯域が全く足りません。

 

つまり、センサーが速くても、“運ぶ道” が細ければリアルタイムは成立しません。

 


 

評価ボードの転送速度、その実力

汎用の評価ボードで生データを転送する場合、標準的な手段の実効帯域は次のとおりでした。検証では単体で実効288Mbps程度が上限です。

通信プロトコル 実効転送帯域 1G Ether比 特徴
SCP(標準ツール既定) 約40Mbps 約4% 暗号化あり+再送あり
FTP系 約192Mbps 約19.2% 暗号化あり+再送あり
UDP(再送なし) 約288Mbps 約28.8% 高速だが検証で約40%のパケット損失

表:評価ボード単体でのプロトコル別 実効転送帯域

 

速度を求めてUDPに寄せると再送がないためパケット損失が増え、安定を求めると速度が出ない。

 

「速度」と「信頼性」がトレードオフ ― これが評価ボード単体構成の限界です。

 


 

FPGA + USB でボトルネックを解消する

当社では、FPGAとUSB(高速転送)を組み合わせた構成を実際に設計・検証しました。生データを FPGAが受信してバッファし、USB経由でPCへ運びます。

従来(Ethernet経由)と 当社の構成(FPGA + USB経由)の比較

図:従来(Ethernet経由)と 当社の構成(FPGA + USB経由)の比較

• 従来:FPGA→MCU間はLVDSで接続されるものの、MCU→PC間の1G Ether(Max 0.48G)がボトルネックとなり、リアルタイム転送ができず、SSDに保存してからの後処理が必要でした。

• 当社の構成:帯域が MIPI < USB となるため、DDRでのバッファのみでリアルタイム転送が成立します。

 

「速度」と「安定性」のトレードオフから抜け出し、取りこぼしのないリアルタイム転送を実現。

 


 

実測で確認 ― 帯域は十分に確保できる

実機で FPGA → USB → PC の経路の帯域を測定しました。

 

実測スループット 14.49 Gbps
理論値(〜20Gbps)に対して約72%の実行レート。測定条件:4K@150fps / YUV422(〜20Gbps相当)のデータで評価。

図2:実測帯域とミリ波生データ帯域(最大)の比較

図2:実測帯域とミリ波生データ帯域(最大)の比較

 

多チャンネルのミリ波データ(最大約9.6Gbps)に対して帯域は十分。リアルタイム転送の実現性が裏づけられました。

 


 

センサー選定のその先まで、一気通貫で

ミリ波を “製品” として動かすには、デバイス選定だけでなく、FPGA設計・高速データ転送・信号処理まで一気通貫の技術が必要です。

  • 評価環境の保有 ― ミリ波モジュールの評価・解析環境を保有
  • FPGA連携設計 ― データの高速転送・リアルタイム化を実機で実現
  • 信号処理のカスタム ― 距離・速度・角度推定のFFT処理を実装・最適化
  • 量産までワンストップ ― 評価ボードから製品化まで一貫支援

 

「センサーは選べたが、その先で開発が止まってしまった」
― そんな段階からでも、お気軽にご相談ください。

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