製品・サービス
アナログ回路の設計開発
アナログ回路設計の開発から製造まで
東京エレクトロンデバイスは、プライベートブランド「inrevium」のもと、FPGA開発をコア技術とした設計・量産受託サービスを提案するメーカーとしての機能を有しています。 加えてハイエンドアナログ半導体の取り扱い経験(Texas Instruments社の販売特約店など)を通じて、多くのアナログ・デジタルのノウハウを有しています。このページではアナログ設計に求められるポイントについて解説します。
アナログ回路設計に求められる設計ノウハウ
アナログ回路設計ではセンサなどで取得したアナログ信号を、FPGA やCPUなどで処理できるようにデジタル信号に変換するまでの一連の信号の流れと、信号処理されたデジタル信号をアナログへ変換し出力するまでの流れをアナログ・シグナルチェーンと呼びます。
1. センサ入力部
自然界のアナログ信号を取り出す
センサーからの微弱な信号を増幅したり、インピーダンス変換をオペアンプで行いますが、部品選定の基準としては低オフセット、低ノイズ、増幅率などがあげられます。求められる信号周波数によっては高スルーレートのものが必要になります。
2. フィルタ処理
不要な信号をカット、必要な信号を増幅
ADコンバータの入力はサンプリングの方式や周波数などにより、前段処理としては高スルーレートで高出力のオペアンプが必要になります。また、必要とされる信号の帯域を考慮したフィルタや、ADコンバータがサンプリングする際に発生するチャージインジェクションに伴うノイズへの対策も必要になるケースもあります。
フィルタは、多くの信号から必要な周波数成分だけを通過させ、ノイズなどの不要な周波数成分を阻止することができます。
シグナルチェーンにおいてはローパスフィルタという高周波数帯の信号を通さず、低周波域の信号を通すフィルタを活用します。
フィルタの設計にはナイキスト周波数(Fs/2)を考慮し、ADコンバータの種類に応じフィルタの次数を決めます。また、安定した信号の出力のために、チャージインジェクションを考慮した適切な容量のコンデンサを使用した回路設計を行うことが重要です。
2-1. 信号増幅
オペアンプは2本の入力と1本の出力を持つデバイスで、2つの入力信号の差分を増幅することができます。センサから得た信号を後段のADCで適切に処理できる大きさに増幅します。オペアンプの出力電圧範囲は、後段のADコンバータのリファレンス電圧に基づく入力電圧範囲に収めるようにする必要があります。
2-2. オペアンプ選定のポイント
オフセット電圧
入力オフセット電圧は入力端子に同じ電圧を加えた時に出力に出てくる誤差電圧です。倍率により大きな誤差として出力されるので、低オフセットのオペアンプが望ましいです。
Rail to Rail
電源電圧の範囲で正確に信号の増幅を行うには広い入力コモン電圧範囲と、広い出力範囲が必要です。特に単電源で使用される場合や電源電圧が低い場合は電源電圧の範囲をフルに活用できるRail to Railタイプのオペアンプを使用します。
ノイズ
オペアンプのノイズには周波数依存性のある 1/fノイズ と、周波数依存性のない、白色雑音 の2種類が存在します。これらのノイズは入力で発生するノイズ(入力換算雑音電圧)として定義されています。出力ではオペアンプのゲイン倍の入力換算雑音電圧がノイズとして信号に加算されるので、システムの系の全体のSN比を考慮したローノイズのオペアンプを選択します。
3. AD変換
アナログデータをデジタルデータへ
ADコンバータはアナログ信号をデジタル信号へ変換する重要な役割を持っています。ADコンバータを選ぶポイントは、求められる信号の周波数や、信号をサンプリングする際のサンプリング方法や分解能、信号のダイナミックレンジ、精度(INLやDNL*¹)などを考慮すると同時に、ADコンバータの変換方式を見極める必要があり、アプリケーションに応じて方式を選択する必要があります。
*¹:INL(積分非直線性誤差)、 DNL(微分非直線性誤差)というADコンバータの精度や誤差に関する指標
方式 | 長所 | 短所 | 用途 |
---|---|---|---|
デルタ・シグマ型 (ΔΣ型) |
高分解能 ミッシング・コードを生じない |
低速 | 分析・計測 オーディオ信号 |
逐次比較型 (SAR型) |
変換タイミングを任意に設定可能 データの出力遅延が無い 動作がわかりやすい |
精度が悪い製品では ミッシング・コードが生じる |
汎用 複数の信号処理 |
パイプライン型 | 中高速 | データの出力遅延 | 画像処理 無線機器 |
AD変換方式と分解能/変換速度との関係
3-1.基準電源
ADコンバータの変換時の基準になる電源で、ADコンバータの仕様に基づいた電圧と、低ドリフト、低ノイズで高精度のものが望ましいのですがADコンバータの性能と、求められるシステム要求に合わせた性能を選択する必要があります。
3-2.サンプリングクロック
ADコンバータのサンプリングに用いるクロックはジッターのない高精度のものを用いることにより、ADコンバータのSNRが良くなり、変換後の波形再現性が高くなります。
Jitter Sensitivity in SAR vs ΔΣ ADC
3-3. 変換速度とエイリアシング
A/D変換では、入力信号の変化を一定周期でサンプリングして変化をデジタル量に置き換えます。入力信号の周波数に対して少なくとも2倍以上の早いサンプリング速度が要求されます。これを標本化の定理といい、サンプリング周波数(Fs)の1/2の周波数をナイキスト周波数といいます。
もし、入力信号の変動する周波数に対してサンプリング周波数(Fs)が2倍以下の場合、サンプリングされたデータは離散的信号となり、その再生した信号は入力信号とは違った波形となってしまいます。このような状態をエイリアシングと呼びます。
エイリアシングを避けるには標本化の定理に従ってサンプリング周波数(Fs)を決定します。エイリアシングを避けるためにAD変換する前に入力信号に対してフィルタ処理を行い、ナイキスト周波数以内に抑える必要もあります。
アナログ・シグナルチェーン回路設計で注意すること
システムの性能を考慮する際に、センサからADCへかけて受動素子や各デバイスのノイズに注意が必要です。シグナルチェーンの回路全体のノイズに対して出力される信号がどの程度有効かを考慮しデバイスの選定やシステムの仕様決めを行います。
これまで見てきた通りデバイス選定には多くのことを考慮する必要があります。TEDでは設計受託サービスを通じて様々な部品の選定、ご提案を行っております。以下にTEDがすすめるアナログ・シグナルチェーン向けのデバイスをご紹介します。
選定デバイス例
- デルタ・シグマ型
- 逐次比較型
開発支援ツール
TINA-TI
TINA-TI は、DC 解析、過渡解析、周波数ドメイン解析など、SPICE の標準的な機能すべてを搭載しています。TINA には多彩な後処理機能があり、結果を必要なフォーマットにすることができます。仮想計測機能を使用すると、入力波形を選択し、回路ノードの電圧や波形を仮想的に測定することができます。
TINA の回路キャプチャ機能は非常に直観的であり、「クイックスタート」を実現できます。ADCのシミュレーションモデルも最新のバージョンが用意されております。
EVM評価ボード
デバイス評価キットによって評価基板、高精度ホスト・インターフェイス (PHI) コントローラ・ボード、関連するコンピュータ・ソフトウェアで構成されており、USB 経由での ADC との通信、データのキャプチャ、データ分析の実行が可能になります。
まとめ
アナログ回路設計の開発から製造まで
アナログ回路設計開発の際に留意すべき事項が数多くあります。対象となるアプリケーションによっては基板面積と実装部品、制度と価格と占有面積など多くのトレードオフが発生することが想像されます。
東京エレクトロンデバイスではこれまで蓄積した多くの設計受託経験やTexas Instruments社の販売特約店として、アナログ・シグナルチェーン設計における最適な部品の選定、回路設計、レイアウト、定数設定、基板製造において最適な技術リソースのご提供が可能です。
併せて基板製造後の機能測定やデバッグに必要な機材も多く持ち合わせており問題発生時のサポートも充実しています。
ニーズが多様化するアナログ回路設計だけでなく、後段のFPGA等のデジタル回路との組み合わせにおいて
・工数のかかる設計サイクルを削減
・要素検討から試作設計までの開発期間を短縮
・その先の量産製造もサポート
が可能な東京エレクトロンデバイスの設計受託サービスをご活用ください。