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生体モニター機器設計の勘所
AC結合の配置位置による性能比較

第1話「生体アンプにおけるAC結合の必要性」では増幅回路設計におけるAC結合の重要性を解説しました。複数段のオペアンプを使用した増幅回路設計において、AC結合はどこで行うのが最適なのでしょうか?

今回はAC結合の配置位置の違いによって生じる性能差と回路設計のポイントについて解説していきます。

 

 

 

 


 

ブロック図による構成比較

AC結合の配置場所によりDCアンプとACアンプの境界が変わってきます。生体信号計測回路は線形回路となりますので、AC結合の場所はどこに配置しても最終の出力結果は同じになります。基本ブロックをもとにAC結合の配置位置を3通りで考察します。

 

1. 初段AC結合(基本ブロック:一般的)

1. 初段AC結合(基本ブロック:一般的)

2. 入力AC結合

2. 入力AC結合

3. 後段AC結合

3. 後段AC結合

 

AC結合の配置によらず最終の出力結果は同じになりますが、配置位置による違いを見ていきましょう。初段AC結合と入力AC結合を例に比較します。

 


 

初段AC結合と入力AC結合の比較

前述の通り最終の出力結果は同じですが、初段~3段アンプの性能が異なります。

 

初段AC結合と入力AC結合の比較

 

こちらの図にあるように、AC結合を初段アンプの前と後で実施することにより、初段アンプゲイン値の選定に影響が出ます。

 

初段AC結合

初段AC結合の場合、第1話で説明したアーチファクト成分についても増幅してしまうこと、分極電圧にも考慮しなければならないため、初段アンプのゲイン値を大きくすることができません。したがってG1のゲイン不足をG2、G3で補うことになります。

初段AC結合

初段AC結合

 

入力AC結合

入力で分極電圧が除去されていますのでG1のゲインは可能な限り大きくできます。(オペアンプの性能次第)

ここでは100倍としてあります。初段のゲインが大きいため2段以降のゲイン設定が楽になり、オペアンプの性能もシビアにならずにすみますし、なおかつより高いゲイン設定も可能となります。

また初段の差動アンプのゲインは大きいほど入力換算ノイズは小さく、また同相信号除去比(CMRR)は大きくなりますので、微小信号増幅には好条件となります。

入力AC結合

入力AC結合

 


 

初段AC結合と入力AC結合の比較

パルス信号入力時の応答波形

またAC結合とは、DC成分(低周波を含む)除去のハイパスフィルター(高周波成分通過フィルター)で微分特性を持ちます。(基本回路はCRフィルターとなります。)

低周波における斜線は振幅の減少を意味し、低周波成分が低減されていることを意味します。

 

パルス信号入力時の応答波形

 

AC結合による応答波形:パルス波形入力

AC結合による応答波形:パルス波形入力

最終的な出力の応答波形は、初段・入力いずれのAC結合でも結果は同じになりますが、増幅回路に使用する周辺CRの乗数の選定にも影響があります。(入力抵抗および入力保護抵抗等)

 

1. 初段AC結合

1. 初段AC結合

2. 入力AC結合

2. 入力AC結合

 

AC結合の配置によって初段のオペアンプの選択が変わってきます。

 


 

まとめ

AC結合の配置によって増幅回路に使用するオペアンプの性能、周辺乗数、ノイズ影響が大きく異なります。

 

 

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