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生体モニター機器設計の勘所
生体アンプにおけるAC結合の必要性

テクノロジーの進展に伴い、従来型の医療から予防や予後の周辺領域を含む多様なヘルスケアサービスの拡大が期待されています。心電図、筋電図、誘発電気検査装置などの多くは、コンピュータを利用して生体電位の導出や分析を行います。活動電位の記録には、小さな電位を雑音なく増幅し、適切な周波数帯域でアナログ信号からデジタル信号に変換することが理想的です。

このシリーズでは、「心電」「筋電」「脳波」などのバイタルデータの増幅回路設計において留意すべき点を3回にわたって解説します。第2話では、AC結合の配置位置による性能比較について、第3話では、生体由来および電極設置における設計上の留意事項に焦点を当てます。

今後、DXを活用した予防や健康、そして予後に関するヘルスケア製品の利用が加速すると予測されますが、今回は筋電計を例に取り上げ、機器開発における留意点について詳しく説明します。

 

 

 


 

生体アンプとは

生体アンプとは心臓の拍動や筋肉の動き、脳波などの生体から出る微弱な電気信号をを計測するための増幅回路で、基本的にACアンプのことを指します。

生体から生じる信号のうち、「DC成分」と「低周波成分」の2つは意味のない信号成分であるため通常はフィルターにより除去されます。(この場合のフィルターとは高域通過フィルターになります。)

 

信号増幅回路の基本ブロック

信号増幅回路の基本ブロック

 

  • DCアンプ(Direct Current Amplifier)とは
    直流を含んだ信号すべてを増幅する増幅器
  • ACアンプ(Alternating Current Amplifier)とは
    交流信号を増幅する増幅器
  • DC成分とは
    生体と電極間に発生する直流電圧
  • 低周波成分とは
    体動や皮膚インピーダンスによるアーチファクトや呼吸による信号の揺れなど

 

アーチファクトの例
アーチファクトとは、生体信号に混入するノイズです。低周波だけでなく高周波に関するものも存在します。

アーチファクトの例

 

  • ノイズ
    体動時に出現
  • ドリフト
    呼吸変動・体動などにより生じる基線の変動
  • 筋電図
    緊張や寒さなど筋肉の細かな振動で生じる
  • 交流障害
    アース線の接続不良や交流電源
  • 接触不良
    電極と皮膚の接触の問題

 


 

AC結合の必要性

生体に電極を装着すると必ず「分極電圧」と呼ばれる直流電圧が発生します。これは電極に外部から電流を流したことにより発生する電極と生体間の電位差のことで、分極電圧が大きいと測定回路の動作に影響を与えてしまいます。

したがって分極電圧を除去するフィルターが必要となり、それがいわゆるAC結合と呼ばれるものになります。

 


 

AC結合の有無による出力の違い

一例として、入力生体信号(振幅 1mVp-p)を1,000倍に増幅する場合を挙げます。オペアンプのゲイン値はそれぞれ、初段= 20倍、2段= 10倍、3段= 5倍、トータル=1,000倍とします。

AC結合の有無による回路構成の違いは以下のようになります。

 

AC結合なし

AC結合なし

AC結合ありAC結合あり

 

AC結合をしない場合

全信号 (DC+AC) を増幅してしまうため、電源電圧110V程度のオペアンプを必要とします。
分極電圧を含んだ生体信号を初段アンプにて増幅してしまうため、電源電圧1.8Vのオペアンプを使用すると分極電圧が2Vを越えてしまいます。2段、3段目のオペアンプの選定にも影響を与えます。

 

AC結合をしない場合

AC結合なし 入力信号 初段 2段 3段(出力信号)
Gain 20 10 5
信号振幅(mVpp) 1 20 200 1,000
分極電圧(V) 0.1 2 20 100

 

AC結合をする場合

AC結合することによりDC成分を増幅することなく、生体信号(AC成分)のみを増幅するため、1.8V対応のオペアンプの使用が可能になります。分極電圧を0Vに固定できるため、AC結合のあとは信号のみ増幅することができます。

 

AC結合をする場合

AC結合あり 入力信号 初段 2段 3段(出力信号)
Gain 20 10 5
信号振幅(mVpp) 1 20 200 1,000
分極電圧(V) 0.1 0 0 0

 

AC結合の有無は増幅器の部品選定に影響を与えます。 次回は「AC結合の配置位置」による性能について比較したいと思います。

 

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