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医療機器装置の改善ポイント
【眼底カメラ編】
今回は、眼科医が眼底の構造や血管、網膜の状態を観察するために使用する特殊なカメラである眼底カメラに、DLP®デバイスを応用して、撮影における縦収差を補正する方法についてご紹介します。
東京エレクトロンデバイスは、テキサス・インスツルメンツ社が公認している国内唯一のDLP®デザインサービス プロバイダとして、最適なDLP®デバイスの選定から基板設計(LED駆動回路設計や高速インタフェース設計など)やDLP®ソフト設計といった幅広い設計支援を提供いたします。
眼底カメラとは
眼底カメラは、眼の奥にある血管や網膜の状態を観察するために使用される医療機器です。このカメラは、瞳孔を通して眼底に直接アクセスし、高解像度の画像を撮影することができるため、糖尿病性網膜症や目の病気(白内障など)などの、疾患の早期発見や診断に重要な役割を果たしています。
DLP®とは
テキサス・インスツルメンツ社のDLP®は、Digital Light Processingの略で、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)と呼ばれる半導体素子を用いたプロジェクターの投影方式です。
DMDは、数百万個もの微小なミラーが敷き詰められたチップで、それぞれのミラーが光の反射角度を制御することで、画面に映し出す画像を形成します。
DLP®が高画質を実現する理由
ネイティブコントラスト比が高い
DLP®プロジェクターは、DMDのミラーが光を反射するか遮断するかによって明暗を表現するため、非常に高いコントラスト比を実現できます。コントラスト比とは、最も明るい白と最も暗い黒の差を表す値で、この値が高いほど、黒が締まったメリハリのある画質になります。
色再現性に優れている
DLP®プロジェクターは、カラーホイールと呼ばれる色フィルターを用いて、さまざまな色を表現します。カラーホイールには、複数の色素がセクター状に配置されており、DMDが光を反射するタイミングによって、これらの色素を合成することで、豊かな色彩を再現することができます。
DLP®マイクロミラーは、半導体チップ上に形成されたアルミニウム製で、非常に小さな鏡です。個々のミラーは電気的に制御され、静電引力によって±12度の角度で高速に傾けられます。このシンプルな構造と動作原理により、液晶パネル方式に比べて高速な応答速度を実現しています。
またDLP®は、355nm~2500nmの紫外線から赤外線の微細な加工や精細な投影が可能です。その高画質と共に近年では映像プロジェクター以外の用途としても大きな注目を集めています。
DLP®技術の眼底カメラへの応用
通常、眼底カメラの光源には白色光が使用されますが、白色光は赤色、緑色、青色の3つの光の混合体であり、そのために眼底の各層で色収差が発生します。この色収差は、眼底の画像の鮮明度や解像度を低下させ、眼底写真撮影では、網膜の微妙な異常が見えにくくなる可能性があります。
この課題に対してDLP®を用いると、眼底の各層に正確に光を照射することが適切です。
眼底の網膜層に光を照射する際には赤色光を、眼底の脈絡膜層に光を照射する際には緑色光を、眼底の毛様体層に光を照射する際には青色光を使用します。これにより、各色の光が眼底の各層に正確に照射され、色収差を大幅に改善することができます。
またDLP®を眼底カメラに組み込むことで、撮影した画像をデジタル処理し、縦収差を補正することができます。
DMDを使用した縦収差補正は、レンズの形状を調整したり、レンズを追加したりする方法に比べて、より簡単により正確に縦収差を補正することができます。
DLP®を眼底カメラに活用するメリット
DLP®技術を眼底カメラに組み込むことで、以下のような利点が得られる可能性があります。
画像品質の向上
DLP®を使用することで画像の明るさやコントラストを向上させることができます。これにより、眼底の微細な構造や異常をより鮮明に観察することができます。
照明の制御
DLP®を使用することで、眼底に照射される光のパターンや強度を制御することが可能です。これにより、眼底の特定の領域を重点的に照らしたり、異常部位を強調したりすることができます。
診断支援機能
DLP®を組み込んだ眼底カメラは、AI(人工知能)と組み合わせて、異常検出や自動診断を行う機能を提供することができます。DLP®が提供する高品質な画像データをAIが解析し、医師に異常の可能性を指摘することができます。
安全性の向上
DLP®を使用することで、眼底に照射される光の安全性を向上させることができます。特定の波長や強度の光を選択し、眼に対する影響を最小限に抑えることができます。
これらの利点を活用することで、眼底カメラはより正確で効率的な診断を提供し、眼科医の診療活動をサポートすることができます。ただし、実際の応用にあたっては、医療安全性や規制要件などが考慮される必要があります。
東京エレクトロンデバイスでは、医療機器開発における要件定義やリスクマネジメント等のQMS関連の対応が可能ですので設計の前段階からお客様の製品開発をご支援致します。