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【画像処理マスターへの道】
実は身近で使われている画像処理
こんにちは!2025年1月1日より完全子会社から吸収合併されたファーストの担当、Uです。これから画像処理に関連するさまざまな情報をお届けしたく、連載をスタートします。
連載の初回となる今回は、実は身近で活用されている「画像処理」について触れていきます。私たちの日常にも大きく関わるこの技術、実は思っているよりも身近に存在しています。このシリーズを通じて、画像処理の世界を一緒に深掘りし、皆さんも画像処理の達人に近づいていきましょう!お楽しみに。
実は身近で使われている!画像処理とは?
最近、よく耳にする「画像処理」という言葉。実はこれ、簡単に言うと「人が目で見て行う判断を、自動化する技術」です。
製品が私たちの手元に届くまでに、製造現場の作業員の方が行っている作業を画像処理で置き換えると、こんな風になります。
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- 目で見て位置を合わせる → 画像処理で自動位置決め
- 目で見て良し悪しを判断する → 画像処理で品質検査
- 目で見て個数を数える → 画像処理で自動カウント
- 定規の代わりに長さや幅を測る → 画像処理で高精度測定
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実は私たちにとって身近な製品にも画像処理は使われているんです!
ここでは、画像処理の活用例をいくつかご紹介します。
電子・半導体業界

携帯電話
キーボタンの印刷文字の検査(潰れ、傷)、液晶の表示欠陥

液晶モニタ
点灯表示の検査(シミ・ムラ、線欠陥、ドットの潰れ)、製造過程での位置決め

コネクタ
ピンの検査(折れ、曲がり)と計測(整列具合、組付け位置)

基板
基板のパターン検査(断線、ショート)、部品実装の位置決め
自動車業界

エンジンブロック
レーザー刻印されたエンジン番号の読み取り、点火プラグの成型検査

メーター
アナログメーターの数値と針位置の検査、各種状態表示の点灯検査

ヘッドライト
照射方向の検査

ホイール
形状の識別、ロボットでの自動組付けの位置補正
道路・建設業界

コンクリート壁
ひび割れの幅計測、壁面内部の空洞検査

コンクリート橋脚
ひび割れなどの表面劣化状況の把握、スケッチ図の生成

アスファルト道路
路面性状計測車で撮った道路画像の劣化状況の把握(ひび割れ、わだち掘れ)

トンネル
赤外線カメラによるコンクリート内部劣化の検査
食品・薬品業界

薬(錠剤・カプセル)
形状の検査、塗布または刻印されたロゴマークの検査

青果
キュウリなどの野菜や果物などの等級選別

ボトル(ペットボトル・ビン)
パッケージ(ラベル印刷、直接印刷)の検査、ケースやトレイ、コンベアからのピッキングでの対象物の認識

缶詰
製造番号と賞味・消費期限の読み取り、印字検査
このように、画像処理は自動化・省人化・作業負担の軽減に貢献し、小さいものでは顕微鏡画像を使用した細胞業界やサブミクロンレベルの半導体業界から、大きいものでは自動車部品やコンクリート構造物、リサイクル業界まで、さまざまな業界で活用されています。
画像処理専業メーカーが開発した、BLOBという画像処理装置
現在と比べて、カメラやハードウェアのスペックも低くOSもまだ発展途上の時代に、カメラ画像から特定の形状を見つけ出すことができる「BLOB」という画像処理装置を開発したのが、画像処理専業メーカーの株式会社ファーストでした。こちらが当時の製品イメージです。
※ファースト社は、1982年8月に創業した、FA(ファクトリーオートメーション)向け画像処理専業メーカー
懐かしいブラウン管モニタの下にある筐体が「BLOB」。この装置は、モノクロカメラに対応しており、カメラ画像を使って「ブロブ解析*¹ 」によって特定の形状を見つけ出すという、非常にシンプルでありながら画期的な技術でした。
限られたハードウェアスペックの中で、エンジニアたちはさまざまな工夫を凝らして高速化を実現し、その後、正規化相関を用いた「グレイサーチ*²」機能も追加されました。ブロブ解析とグレイサーチは現在に至ってもルールベース*³ という画像処理の基礎的な技術です。
カメラが高画素化してカラーカメラがFA業界で活用されるようになっても、「画像の中から特定の形や色の物体を見つける」際には、これらの基本技術が今なお中心となって活躍しているのです。
画像の中から特定の物体を塊(ブロブ)として抽出し、得られたブロブの面積や幅と高さ、周囲長、凸包との比較、円形度などの特徴量を駆使して解析することで、目的のブロブだけに絞り込んでいく技術です。画像処理ではそれぞれの塊をBLOB(Binary Large Object)として扱ってきたので、それらを解析するということでブロブ解析と呼ばれています。
グレイスケールのモノクロの画像に対して、登録された模様(パターン)との濃度値(明るさ、グレイの度合い)の正規化相互相関を計算することで、画像内から登録された模様と位置する箇所を見つける(パターンマッチング、サーチ)の技術です。現在はエッジの特徴量により幾何形状として見つけるFPMというサーチもあり、適宜使い分けられています。
ファーストでは、画像からそのものの特徴を数値(特徴量)として取得するための処理の組み合わせ(アルゴリズム)をエンジニアが設計することを、近年のAI(特に深層学習)との対比として、ルールベースと呼んでいます。
その後、画像処理を取り巻く環境は飛躍的に進化してきました。カメラのセンサー技術やインターフェースの進化、マシンスペックの向上、そしてWindowsの普及に加え、最近ではAI技術のブームが加速しています。
この大きな変化の中で、ファーストは一貫してソフトウェアとハードウェアの両面から開発・販売・保守を行うという独自の姿勢を貫いてきました。これにより、FA品質の互換性の維持や、長期にわたる安定供給、さらに長期修理対応が可能となり、相性問題の心配なしに安心してご利用いただけます。万が一のトラブル発生時には、ハードウェアとソフトウェア両面からしっかりサポートを提供できる体制も整っています。
その強みは、2018年には東京エレクトロンデバイスの完全子会社となり、現在はプライベートブランド事業の一つとして、画像処理事業のブランド名と共に引き継いでいます。
次回は、「近年の取り組み」としてAI画像処理の活用についてお届けします!