- HOME
- 再生医療の進化と画像処理技術の融合
設計 設計・製造受託
再生医療の進化と画像処理技術の融合
再生医療は、iPS細胞や幹細胞を活用して、損傷した組織や臓器の修復・再生を目指す先進的な医療技術です。細胞そのものが「薬」となるこの分野では、細胞の培養過程において、状態を正しく観察し、培地環境を適切に調整することが極めて重要です。
これまで細胞の状態評価は、熟練技術者による目視検査に頼っていました。しかし近年では、画像処理技術やAI(人工知能)、機械学習の導入が進み、より定量的かつ客観的な評価が可能になってきています。
熟練者の判断基準をAIで再現することで、評価のばらつきを抑え、細胞品質の均一化を図ることができます。これにより、培養環境の調整にも正確なフィードバックが可能となり、再生医療の安全性と効率性が大きく向上します。
当社では、こうした再生医療分野における課題に対し、画像解析技術やAIを活用したソリューションをご提供しています。細胞観察の自動化や品質管理の高度化を支援することで、再生医療のさらなる発展に貢献してまいります。
再生医療における細胞培養プロセスと重要性
細胞の培養には以下のようなプロセスがあります。
再生医療における細胞の培養プロセスは、治療の安全性・有効性・信頼性を左右する極めて重要な工程です。
細胞そのものが「薬」
再生医療では、生きた細胞自体が治療の主役です。目的の細胞に正しく分化し、必要な機能を安定して発揮できることが必須で、有害な変異や染色体異常、ウイルス・細菌などの汚染がないことも絶対条件です。つまり「細胞を育てる=高品質な薬をつくる」ことと同じ意味を持ちます。
わずかな環境差が品質に直結
培養環境(温度・湿度・ガス濃度・培地成分など)の微妙な違いが、細胞の生存率や分化傾向に大きく影響します。たとえば、培地の成分やパッセージ(継代)のタイミングが少し違うだけで、同じ細胞でも「まったく別物」になることもあります。
品質管理とトレーサビリティが命綱
厳しい品質試験をクリアした細胞だけが治療に使われます。さらに「いつ・誰が・どんな操作をしたか」を記録するトレーサビリティ管理も必須です。これにより、万が一の不具合時にも原因を特定し、迅速な対策が可能です。
細胞培養における検査の重要性
細胞の増殖過程では、分化状態や形状を計測し、的確な品質評価を実施すること、安定的に細胞を培養するための工程管理が高品質な細胞を培養する重要なポイントとなります。
品質評価や工程管理のためのに必要なデータは、蛍光顕微鏡や位相差顕微鏡から得られる画像データを解析して細胞の形態的・数量的特徴を定量的に評価する取り組みが進んでいます。
代表的な画像解析のポイント
細胞サイズのばらつき
画像解析により、平均サイズから大きく外れた細胞(極端に大きい・小さいなど)を検出。
楕円率の異常
楕円率*²(円形度)が極端に低い細胞は、分化異常やストレス状態の可能性があります。
*². 楕円率とは、楕円の形の「つぶれ具合」や「細長さ」を表す指標のこと。
形態の異常(突起・分裂異常など)
通常の幹細胞は滑らかな輪郭を持ちますが、異常細胞は突起が多かったり、分裂途中で停止していたりします。画像解析で輪郭の複雑度や分裂状態を定量化し観察します。
東京エレクトロンデバイスの画像処理技術の活用
当社は、画像解析による細胞の分化状態の検査に対して以下のようなソリューションを提供しています。これらの製品は独自技術の画像処理ライブラリ「WIL」およびFVシリーズ(ハードウェア)によって画像処理の高速化、高精度化を図ることができます。
また、AI開発ツール「AIプラットフォーム」やAI推論ライブラリ「WIL-PDL」などによって、さらなる画像判定の精度向上も可能としました。
SphereInspector (細胞検査アプリケーションSW)
- 機能概要:細胞の面積・楕円率の計測、ごみ&異物の検出
顕微鏡で撮影した画像から、パレットの各セルにて培養されている細胞の良否を判定し、画面上に検査結果を表示します。
製品概要(SphereInspector)
OrganoidInspector(神経細胞向け検査アプリケーションSW)
- 機能概要:細胞の形状測定、異物の有無検出、細胞周辺の小枝状物体カウント、成長した細胞神経部の幅(太さ)の計測
製品概要(OrganoidInspector)
画像処理ライブラリ「WIL」を使用するメリット
- 非破壊・リアルタイムで測定可能
- 作業者の主観に依存しない客観的評価
- 工程の自動化、標準化に貢献
- ご要望に合わせた柔軟な対応やカスタマイズが可能(オリジナル設計対応可)
システム構成図
まとめ
当社ではお客様の既存設備(電子顕微鏡など)との併用や、ご要望に合わせたカスタマイズ(構想段階からの設計・開発・実運用まで)にも対応しております。
また、納入後でもバージョンアップや機能追加に柔軟に対応することも可能です。
これまで紹介した当社製品をご利用いただくことによって細胞の培養過程における検査工数の削減や品質の均一性担保など様々な課題解決につながると考えておりますので、ぜひご活用をご検討ください。