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【DX対談】今超えるべきビジョンロボットの壁と将来の展望
~第3話 光学機器の革新がビジョンの可能性を解放する~
ToFカメラ、エリアカメラ、ラインスキャンカメラなどの工業用カメラの分野において、最先端技術と革新的な製品・ソリューションを提供しているセンサシステムの専業メーカー、日本エレクトロセンサリデバイス株式会社(以下、NED)に、ビジョンロボットシステムへの取り組みを伺いました。
日本エレクトロセンサリデバイス株式会社
国内営業部
吉川 博行 氏
・2020年 日本エレクトロセンサリデバイス株式会社に入社
国内営業部配属、現在に至る
インタビュアー
森川 健一(東京エレクトロン デバイス株式会社 設計開発センター第二開発部部長/PB事業推進室室長)
ビジョンロボットシステムについての取り組み
森川 TEDでは、ロボットハンドにカメラを搭載してワークのハンドリングを自動化するような案件において、次世代のToFカメラHelios2*¹のようなToF方式のカメラの活用も視野に入れながら評価を進めていますが、Heliso2 の製造元であるLUCID Vision Labs社の概要や製品ラインアップなどについて 教えていただけますか。
吉川氏 LUCID Vision Labs Inc.社(以下、LUCID社)は2017年にカナダのリッチモンドというバンクーバーの隣町で創業した産業用カメラメーカーで、当社は日本国内の販売代理店です。LUCID社は創業から5年程度と比較的若い会社ではありますが、長年産業用エリアカメラの開発・販売・マーケティングに携わってきた人員で組織が構成されており、ソニー製イメージセンサーをカメラとしていち早く市場にリリースできる体制も整えています。さらに、国内に常駐する日本人の技術スタッフによる、日本語でのサポートが可能です。
LUCID社では扱いやすさ・信頼性・開発および製造効率アップの観点から、カメラインタフェースをGigEに統一しており、一般的な産業用エリアカメラを中心に、三次元計測に特化したToFカメラ、ラインスキャンカメラ、SWIR対応のカメラ(後述)、5GigE、10GigE対応の高速転送が可能なカメラなど、幅広くラインアップしています。
USBカメラなど、GigE規格以外のインタフェースのカメラのお問い合わせをいただくこともありますが、LUCID社では工業用用途向けの製品開発を基本にしていること、インタフェースを統一することで新しいセンシング機能などの開発に注力できることなどから、GigEに特化しているという側面があります。
Helios2は、’factory tough(工業品質)’な高信頼性を実現した3次元ToFカメラです。3次元の奥行精度で1㎜以下(@1mの距離)の繰り返しなど、さらなる精度向上を実現した次世代のToFカメラです。
森川 ToFカメラの他に、おもしろい特徴や優位性をもったLUCID社の製品はありますか。
吉川氏 最近ですと、Atlas SWIR*²という可視光と近赤外光の両スペクトルに対応したカメラになります。近年さまざまなメーカーが近赤外線カメラを販売していますが、Atlas SWIRでは従来のInGaAsセンサーとは異なる構造をもったソニー社のSen SWIR InGaAsセンサーを搭載しており、400nm~1,700nmまでの広い感度領域をカバーしています。
森川 可視光による表面観察と、赤外光による透過観察を1台のカメラで実現できるというのはかなり魅力的ですね。
吉川氏 はい。他には、やはり高速伝送に対応した5GigE、10GigEカメラになります。最近はお客様からのニーズとして、「高速、高解像度、長距離伝送」という3つのキーワードがあります。もともとGigEは100mの長距離伝送に対応した規格ですが、その伝送帯域を上げることでこれらのニーズに対応していることになります。
少しユニークな製品として、お客様のシステムへの柔軟な組込みや統合が可能なPhoenixシリーズ*³があります。
●エリアカメラ GigE(Phoenix)
カメラ本体が24×24mmもしくは28×28mmと非常にコンパクトで、さまざまなレンズマウント規格に対応したり、用途に合わせて接続するプリント基板の角度を変えられたり、フラットケーブルを選択できたりと、OEM供給を強く意識した変幻自在な構造になっていることが大きな特長となります。従って、標準製品以外にも、お客様のニーズに対応したOEM製品もフレキシブルにご対応が可能です。
優位性という面では、Tritonシリーズ*⁴のように産業用カメラでは珍しいIP67対応(防塵防水)のカメラを展開していることが挙げられます。
屋外はもちろんですが、カメラに埃や水がかかることが想定される生産ラインでの使用などにおいても、カメラ自体が防塵防水仕様になっていることで不具合や故障のリスクを確実に回避できます。
●エリアカメラ GigE(Triton)
このように、後発メーカーらしく、他社とは異なる特色をもった製品群を積極的に展開することで差別化を図っていることが、LUCID社の強みだと考えています。
森川 ToFカメラ以外にも、魅力的な製品をいろいろと展開されていますね。
TEDのビジョンロボットシステムでは、AI、画像処理、三次元処理、抽象度や使い勝手を高めるためのシステム統合といった部分に重きを置いて開発を進めていますが、その情報の入り口となるロボットの眼の部分に、30FPS(1秒間に30フレーム)という高いスループットで三次元情報を取得できるToF方式のHelios2を搭載することで、ビジョンロボットの適応範囲がさらに広がるのではないかと感じます。
その他にも多彩な製品が提供されているため、ロボットビジョン用途に限らず、今後の機器選定の参考にさせていただきます。
―――― NED社の概要や取扱い製品などについて教えてください。
吉川氏 当社は、大阪市に本社を置く創業47年目のカメラメーカーです。これまでラインスキャンカメラの専業メーカーとして、最先端の技術を取り入れた製品をご提供してきました。
一般の方々にとってラインスキャンカメラは馴染みがないように思わるかもしれませんが、たとえば競馬のゴールシーンで順位の判定をするために撮られた縦にラインが入ったような写真を一度はご覧になったことがあるのではないでしょうか。あのカメラもラインスキャンカメラを使用しています。
森川 なるほど、TEDの検査装置事業でもラインスキャンカメラは頻繁に使いますので、その原理や特性などは承知していましたが、競馬のゴールシーンの写真がラインスキャンカメラによるものであるとは知りませんでした。
吉川氏 カメラは定点を観測しているので静止している物体を撮像している時は同じ画像が出力され続けるのですが、動いている被検査対象物については高精度にその流れを撮像できます。そのため、動いている物体の撮像や検査の分野では、頻繁にラインスキャンカメラが使われています。このように、ラインセンサーを用いた工業用途のカメラを創業時から作っているのが当社です。
シリコンなどの半導体が、受けた光を電気信号に変換する性質があるということ自体は長らく知られていました。その現象を用いて、実用的なレベルで光の情報を外部に出力する素子が開発されたのが、約50年前といわれていて、それを何かに応用することができないかと考えたことが始まりです。
当時は超高解像度の素子は作れなかったため、ラインカメラに搭載されていた撮像素子を代用し、移動させながらスキャニングしていくというやり方が超高解像度カメラの走りだったようです。その後の技術の進歩により、専用のCCDやCMOSセンサーが製品化され、それらのセンサー性能が飛躍的に向上することで徐々にカメラっぽいものが作りやすくなり、欧州の会社が量産をはじめたというのが近年の流れです。
そのカメラで撮った画像をどう活用するのかというお客様の課題や要望もありまして、その画像を処理できるコントローラー並びに画像処理ソフトのTechview、半導体検査向け製品といった具合に、守備範囲が広がって現在に至っています。
一番新しいところでは、インフラ事業として下水道管の中を走りながら広角カメラ*⁵で管の内壁を撮像できるような製品も手掛けています。
●広角カメラ
森川 これは、カメラというよりも完全にロボットですね。
吉川氏 はい、その通りです。下水道管の検査は、人が入れるような大きさの管では、管の中に寝そべったり中腰になったりして行うのですが、ガスの充満や悪臭などが酷く劣悪な環境であることは容易に想像できると思います。人が入れない管では、それをカメラで代用するのですが、性能に起因する診断ミスや使い勝手の悪さなどのさまざまな課題があり、当社がカメラメーカーとしてもつ知見を活かした“本当に使えるシステム”を製作する動機付けになりました。
これまで述べてきたことが当社の大きな事業の柱です。近年では、先ほどから取り上げていただいている産業用エリアカメラメーカーLUCID社や、産業用カメラ専用の画像取込みボード製品を展開しているMatrox社の代理店業務に加え、GigE、CameraLink、CoreXpressといった工業規格インタフェースに対応した製品の拡充にも注力しています。
TEDへの期待
―――― TEDには今後どのようなことを期待されていますか。
吉川氏 我々は基本的にカメラメーカーですので、カメラ自体の性能やそれを引き出すための使い方といったノウハウは持ち合わせています。また、異常検知などのトータルソリューションをご提案するための、照明なども含めた光学系の最適な配置条件についての知見も持ち合わせています。しかし、それらを設置したり駆動したりするための機構などについては、お客様からお聞きされても明確にお答えできない場合があります。
ロボットビジョンにまつわる技術に留まらず、外観検査などのノウハウや実績をたくさんお持ちのTEDさんと、当社が長年積み上げてきた撮像に関する知見を融合させることで、単独では実現することが難しいようなシステム開発を可能にしていけたらと思います。
森川 例えば、NEDさんの強みであるラインスキャンカメラによる撮像では、カメラを固定して対象物側を移動させるのが基本だと思いますが、カメラを多軸ロボットなどに搭載することで、移動が難しい大きな対象物や、撮像個所に自由度が求められるケースでも、超解像度の撮像ができるようなシステムを開発できると面白いですね。
吉川氏 そうですね。お問い合わせの中に、大きな対象物の反射を伴う球面や曲面を外観検査できないかというご要望があるのですが、お話しされたように狙った場所に精度よくカメラを操作するロボットと照明条件の絞り込みを上手く組み合わせれば実現できるような気がします。
森川 今後はそのような取組みについても両社で進められるといいですね。貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。
*¹ LUCID製品 Helios2
http://www.ned-sensor.com/lucid/lucid-helios2/
*² LUCID製品 Atlas SWIR
http://www.ned-sensor.com/lucid/lucid-atlas_swir/
*³ LUCID製品 Phoenix
http://www.ned-sensor.com/lucid/lucid-phoenix/
*⁴ LUCID製品 Triton
http://www.ned-sensor.com/lucid/lucid-triton/
*⁵ 高画素展開カメラ
http://www.ned-sensor.com/%E9%AB%98%E7%94%BB%E7%B4%A0%E5%B1%95%E9%96%8B%E3%82%AB%E3%83%A1%E3%83%A9/
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