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【DX対談】今超えるべきビジョンロボットの壁と将来の展望
~第5話 画像処理を超えた新たな闘い~

画像処理を超えた新たな闘い

 

1982年創立の老舗画像処理技術メーカーであり、2018年に東京エレクトロンデバイスグループの一員となった株式会社ファーストに、ビジョンロボットシステムへの取り組みを伺いました。

 

プロフィール

FAST LOGO

株式会社ファースト
RV技術グループ 古市 雄大 氏

 

・2009年 株式会社ファーストに入社
・2019年 RV技術グループ配属、現在に至る

 

インタビュアー
森川 健一(東京エレクトロン デバイス株式会社 設計開発センター第二開発部部長/PB事業推進室室長)

ビジョンロボットシステムについての取り組み

古市さん森川 ビジョンロボットシステムにおけるファーストの取り組みを教えてください。

 

古市氏 当社は、従来のやり方では技術的に困難とされてきた外観検査、位置決め、計測といった多種多様なアプリケーションを、独自の画像処理技術とAI技術の融合によって実現しています。ビジョンロボットもその一つで、画像処理とロボットを協調させた柔軟性の高いシステムを提供することで、生産現場に求められている自動化や省人化といった課題解決のお手伝いをしています。

 

森川 これまで自動化を諦めていた作業や工程を、ビジョンロボットで実現しようとする動きが加速しているように思うのですが、古市さんが現場で感じていることはありますか。

 

古市氏 ビジョンロボットをすぐに使いたい、インテグレーションのための手間も時間もかけたくない、といった差し迫った状況といいますか、即効性のようなものを求める現場が増えてきているように思います。

 

森川 業界の裾野も広がっていて、必ずしも自社でシステム構築できるお客様ばかりではなくなってきていますので、「設置してすぐに稼働できる製品を持ってきてほしい」というようなご要望が増えているということですか。

 

古市氏 そうですね。ビジョンロボットに関わらず画像処理システム市場全体に言えることなのですが、例えば、既存のロボットにビジョンを加えて機能アップや多機能化を図るといった個別最適のようなものではなく、もう少し大きい枠でシステムアップされた製品を提供していく必要があると思っています。

 

森川 ビジョンや画像処理の方式などを個々に提案して作り込むというよりも、お客様が現場で実現したいコトをお聞きして、それをそのままカタチにしてしまうということですね。

 

古市氏 はい。お客様にとっては、どのようなロボットや光学系、画像処理が使われているかが重要ではなく、現場課題が解決したり、自動化により生産効率が向上してくれればいいわけですから、そのためのベストな方法を我々が選び、ノウハウもすべて盛り込み、使い勝手も考慮した製品を提供できれば、お客様はただそれを使えばいいだけというシンプルな話です。

 

●FV-RobotAligner(汎用ロボットビジョンシステム)
FV-RobotAligner(汎用ロボットビジョンシステム)

 

―――― AI×ルールベース

 

森川 ファーストでは、ビジョンロボット向けの三次元情報に対しても二次元の画像処理ライブラリを駆使していますよね。

古市氏 当社は古くから画像処理ライブラリを自社開発していて、その種類の豊富さや品質、性能、ノウハウなどには絶対の自信があります。ですので、三次元情報の取得や処理の部分で、2次元の画像処理を適宜組み合わせて処理性能を向上させるという手法は私も気に入っています。

そういった意味では、当社が手掛けるAIを使った外観検査システムなどについても同様のことが言えると思います。中には最初からAIありきの提案をするメーカーもあるようですが、我々はルールベース*¹で解決できる領域を知り尽くしたうえで、AIを補完的に使うというプロセスを踏めますので、双方のメリットを最大限に引き出すことで、他社には真似できないレベルまで性能を引き出す力があると自負しています。

 

森川 なるほど。すべてにおいて、画像処理の専業メーカーであることがベースになっているわけですね。先ほどAIの話が出てきましたが、古市さんご自身はAI技術をどう捉えていますか。

 

古市氏 私自身はまだそれほどAIの技術には手をつけていないのですが、転移学習を想定した学習済みモデルというものには興味があります。それは先に述べた「ただそれを使えばいいだけ」という世界観に通じますし、画像処理メーカーとして長年蓄積してきたノウハウをその学習済みモデルに詰め込めるような気がしています。
お客様に対して「教師データとなる画像を1万枚用意してください」というお願いは現実的ではない場合も多いですし、ロボット動作の強化学習などにしても、本当に収束するか分からない状況の中でロボットに試行の繰り返しを何万回もさせるという前提は成立していないような気がしています。

 

森川 そこにかかる手間も時間も膨大になりますからね。

 

古市氏 そうするとやはり、事前にある程度のユースケースをサプライヤー側が想定したうえで、そのための事前学習をさせておくという話になると思います。想定したユースケースの学習対象を市場調査したうえで、事前にモデルを学習させて製品に組み込むというプロセスが必要になります。その手間をお客様側に頼ってしまうようでは、あまり意味がないと感じています。

 

森川 古市さんがロボットビジョン向けの三次元処理システムを考案する際、どういった発想や順番で検討を進めるのでしょうか?

 

古市氏 私が現在注力している軌跡補正や高精度な位置合せを目的とした三次元処理の場合ですと、まずは光学系の選定が大事になりますね。
例えば、ステレオカメラの場合、原理的には通常の画像が撮れるだけなので、その画像の品質が高く、後段の処理の目的に合った状態であれば、その時点で達成できる精度がほぼ確定します。もしそれで駄目なら、レーザースキャンなどで間接的に撮像して…といった感じです。

 

森川 当り前かもしれませんが、まずは「しっかりと見る」ことが出発点なんですね。

 

古市氏 市販のカメラだとカメラの中で三次元データを作って出力するじゃないですか。それはそれで便利だし、後段の処理が軽くなったりするメリットがあると思うのですが、精度要求がシビアな場合はカメラ側でそこまでやられてしまうと厳しいんです。まずは生の画像データをできるだけ綺麗な状態で取得して、画像処理で最適化して、最後に三次元処理を行うというやり方がベストだと考えています。

 

森川 たしかに、画像処理に長けている者からすると、カメラや専用コントローラでデータの加工をされるより、生データを扱えるほうがありがたいですよね。

 

古市氏 そうでないと対処のしようがない場合が多いんです。失われたデータは取り戻せないですからね。

ビジョンロボットシステムの課題

森川 AI×ルールベース技術の進化で、ビジョンロボットがお役に立てる市場が大きくなりつつある中、解決すべき課題があるとすればどんなことになるでしょうか。

 

古市氏 これまでのお話と重複するかもしれませんが、たしかに光学系や三次元処理、AI技術といった個々のテクノロジーの進化には目を見張るものがあると思います。しかし、半完成品とも言われるロボットにこれらのビジョン機能を付加してシステムとして完成させるためのインテグレーションコストはまだまだ高いと思います。この状況は、ユーザー側にとっても提供する側にとっても嬉しいはずがありません。もちろん、既存の技術では太刀打ちできないような課題を解決するための要素開発も重要ですが、一方でそれらの要素技術を低コスト、短納期ですぐに使えるカタチにするための仕組みを構築していくことも同じくらい重要なのではないかと思います。

 

森川 同感です。我々が「動作指示型」という概念を持ち込んで開発を進めているのも、まさにビジョンロボット民主化のためですから。

今後の展望

古市氏 まず、当社がTEDのグループ会社になったことが大きな変化をもたらしたと思います。それまでは、さまざまな制約の中で当社単体では実現できないこともありましたが、営業面でも技術面でも大きなサポートを得られるようになったと実感しています。

ロボットビジョンの開発においても、様々な画像処理を組み合わせた協調的な動作であるとか、抽象度の高い作業指示を可能とする動作指示型システムの構築であるとか、そういった付加価値の高い機能を次々に追加できていることもありますし、お客様の要求に対して、ロボットビジョン単体ではなくシステム単位でお応えできる体制が急ピッチで整ってきていると感じています。市場調査、製品企画、研究開発といったプロセスを丁寧に踏みながら製品を生み出せるようにもなってきました。
一方で、私自身はメンターとなるようなお客様からの案件をベースにして、その開発で得られた知見や経験を継続的に育てて発展させていくようなプロセスも必要だと思っています。やはり、本当の答えを知っているのは、現場にいらっしゃるお客様ですので。

 

森川 現場主義を徹底されている古市さんらしいお話をたくさんお聞きすることができました。これからもよろしくお願いします。

 

 

*¹ ルールベース
人の手によって記述されたルールによって動くもので、AIの対極にあるものを指す。

 

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