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生体モニター機器設計の勘所
生体および電極設置における設計留意事項

本シリーズでは、増幅回路設計におけるAC結合の必要性や配置位置による回路構成の違い、性能差について解説しました。本記事では複数の電極を使用する機器設計と生体変化(皮膚インピーダンス)などを考慮した設計のポイントを解説していきます。

 

 

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生体分極電圧を考慮した増幅回路設計のポイント

分極電圧とは、生体(皮膚)と貼り付けた電極間に発生する直流電圧のことです。

発生する分極電圧は、一定ではなく、電極の貼り付け場所によっても異なりますし、生体の変化(皮膚インピーダンスの変化)によっても時々刻々変化します。

増幅回路設計には生体に貼り付けた電極間に発生する直流電圧(分極電圧)に考慮した設計が必要です。

分極電圧は皮膚インピーダンスと呼ばれる抵抗成分を通してアンプへ入力されます。皮膚インピーダンスは個人差があり数KΩ~数10KΩ程度になります。
生体分極電圧を考慮した増幅回路設計のポイント

この値が大きいとノイズ発生要因となりますので、電極を張り付ける前にスキンクリーナーなどで前処理をすることが望ましいです。

各電極における分極電圧のGND(RA_GND/LA_GND)と計測回路のE_GNDは同じではなく電位差があります。

そこで、通常は3番目の電極を配置(不関電極としてこの場合ですと右足部分)しその電極をアンプでドライブすることが多いです。
(E_GNDなどを介すことによりGND間電位の共通化を図る)

 


 

電極の貼付位置による回路構成の工夫

電極の貼り付け場所がV1, V2のように非常に近い位置(数cm程度)にある場合は、発生する分極電圧や皮膚インピーダンスがほぼ同じと考えることができます。

V1_Z≒V2_Z, V1_DC≒V2_DC, V1_C≒V2_C, V1_GND≒V2_GND

またV1, V2とアンプを接続するケーブルも短いものであれば入力AC結合を採用できます。

電極の貼付位置による回路構成の工夫
AC結合が2~3つ必要となります。入力でAC結合されていますので、G1のゲインは可能な限り大きくとることができます。G1ゲインが大きいことは、ノイズ低減に大きく寄与します。

各電極における分極電圧のGND(V1_GND/V2_GND)はほぼ同電位とみなせますので、3番目の電極を配置しなくても問題ない可能性があります。また電極の位置は、V1とV2から離れたところに配置すれば右足である必要はありません。

 


 

まとめ

・生体アンプの特長と増幅回路におけるAC結合の必要性
AC結合の有無は増幅器(オペアンプ)の部品選定に影響を与えます。

・AC結合の配置位置による性能比較  
AC結合の配置によってオペアンプの選定および周辺回路が異るとともに信号性能(ノイズなど)にも影響を与えます。

・生体分極電圧と測定回路について 
電極の素材、電極の接触位置 電極-信号処理回路間の距離および生体変化(生体インピーダンス)考慮して設計することが望ましいです。

 

項目 初段AC結合 入力AC結合 勘所
ハイパスフィルター数 ◎1回路/ch 2~3回路/ch 多チャンネルになるほど入力AC結合の部品点数は増加
初段ゲイン  G1 小 (5~10倍程度) ◎大 (~500倍) 初段AC結合の場合
分極電圧のためG1のゲイン値に制限有
2段ゲイン   G2 大きくする必要あり ◎設定の自由度高い 初段AC結合の場合
G1のゲイン不足をG2で補う必要有(高ゲイン化のためG3も必要なケース有)
オペアンプを高精度/高速のものにする必要がある
ノイズの大きさ(実効値) 中~大 ◎小 G1を大きくできるためノイズ性能が初段AC結合に比べて有利
同相信号除去 ◎大
入力抵抗 約1MΩ以上 ◎約500KΩ以上
入力保護(患者保護)抵抗 必須
数10K~数100KΩ
◎不要 入力AC結合
・コンデンサ入力となるため患者保護用(電流保護)抵抗が不要
・ノイズ性能が有利になります初段AC結合
・電源電圧によるDC結合のため、患者保護用(電流保護)抵抗が必要
・回路の入力抵抗も大きい値(1MΩ以上)が必要です
・保護抵抗はノイズ源となり、システム全体のノイズ低減には不利
電極間距離 ◎特に制限なし なるべく近く
電極入力アンプ間ケーブル長 ◎特に制限はないがなるべく短い方が良い なるべく短く

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