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脱炭素社会への切り札 【次世代パワー半導体】
GaNパワー半導体とは

GaNパワー半導体とは

 

ワイドバンドギャップ半導体の中でもSiCとともに注目が集まるGaNパワー半導体について解説します。

 

 


 

GaN(窒化ガリウム)とは?

 

GaN(窒化ガリウム)とは、 III/V族の化合物半導体(*¹)で、Siの約3倍にあたる3.4eVのワイドバンドギャップ(*²)特性をもっています。

材料特性としては、窒化ガリウムは、非常に硬く、機械的に安定で、高い熱容量と熱伝導率をもっています。そのため機械的、化学的な加工が難しい材料のひとつです。

エレクトロニクス分野での採用としては、1990年代から青色発光ダイオード(*³)向けに市場投入が始まりました。その後、2006年頃より通信基地局向けにGaN HEMT(*⁴)が採用され、その高効率と高電圧動作により採用が進んでいます。

近年はGaN材料のワイドバンドギャップ特性、高耐圧特性により省エネデバイスとして、パワー半導体用途でも採用が進んでいます。スマホ、PC向けの急速充電器として採用が進み、今後はEVの車載DC-DCコンバータ、データセンター向け電源として成長が期待されています。

また、高放射線環境下での安定性が確認されていることから、軍事・宇宙分野での応用も期待されています。

GaNデバイスの今後の市場予測

パワー半導体の市場(世界)
経済産業省 「次世代デジタルインフラの構築」プロジェクトに関する研究開発・社会実装計画(案)の概要
2021年より抜粋
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/green_innovation/industrial_restructuring/pdf/003_04_00.pdf

 


 

GaNパワー半導体の用途

 

GaNパワー半導体としてはSiCと同じく高耐圧かつスイッチング特性に優れているにすぐれてる特徴があります。

ワイドバンドギャップがSiの3倍ほどあるため、高熱下での動作が可能です。Siと比較して絶縁破壊電界が11倍あるため高耐圧性があります。またドリフト層の距離も短くできるため、オン抵抗を少なくでき、電流低損失、省エネ化が可能です。

SiCとの比較した場合のメリットとしては、電子移動度、電子飽和速度が高いため、スイッチング特性がさらに高く、部品小型化できる特徴があります。そのため高周波デバイス用途にも使用可能となります。

SiCとの比較でのデメリットとしては、熱伝導率が低く、またデバイスの構造が横型構造のため、高耐圧大電流用途としては現状SiCが採用される傾向にあります。

従ってGaNパワー半導体としては750V以下のサーバー電源等、電化製品用急速充電の用途が現状の主となりますが、今後SiCと同様に縦型構造が採用されると高耐圧、大電流が扱えるようになり、EVのインバータ等でも採用が進むことが期待されています。

 

GaN 性能特性比較

GaN 性能特性比較

GaN 採用領域

GaN 採用領域

 

パワー半導体の市場(世界)
経済産業省 「次世代デジタルインフラの構築」プロジェクトに関する研究開発・社会実装計画(案)の概要
2021年より抜粋
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/green_innovation/industrial_restructuring/pdf/003_04_00.pdf

 

GaN HEMT 横型構造イメージ図

GaN HEMT 横型構造イメージ図

 


 

GaNパワー半導体の課題

 

GaNパワー半導体の課題としてはSi/SiCに比較してのコストおよび品質面の課題があります。コストの問題の対応策としては、基板の大型化が各社進んでおります。

また、加工方法としては、ラップから研削へのより高速な加工への転換が進んでいます。品質面の課題としてはSiCに比較しても結晶欠陥が多く、縦型デバイスとして基板を使えないという問題があります。

この問題に対しては、GaN 単結晶基板とその上のエピ成長技術が進展し、低欠陥化への道筋ができつつあります。これらのコスト品質の課題をクリアし、脱炭素、高速通信社会の実現のためさらなる量産、社会実装がすすむことが期待されています。

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用語集

 

*¹ 化合物半導体2種類以上の元素が結合してできる半導体です。化合物半導体となる元素の組み合わせは代表的なものにIII族とV族元素、II族とVI族元素があり、それぞれIII-V族半導体、II-VI族半導体と呼ばれています。

*² ワイドバンドギャップ:従来の半導体よりもバンドギャップが大きい半導体材料です。シリコンやガリウムヒ素などの従来の半導体材料よりもはるかに高い電圧、周波数、温度でデバイスを動作させることが可能です。

*³ 青色発光ダイオード:電気エネルギーを光エネルギーに変換する発光ダイオード(LED)のうちの一つで、窒化ガリウム (GaN) を材料とする、青色の光を発する発光ダイオードです。

*⁴ HEMT:HEMTは高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor)の略称です。電界トランジスターの一種で横型のデバイス構造で、電子が発生する層と電子が走る層がわかれており、上層の不純物が入っている層で発生した電子は、不純物が入っていない高純度の下層に移動してから、出口電極(ドレイン)へ向かって移動するので、電子が不純物にぶつかることなく移動ができます。そのため雑音が少なく、電子の移動速度を最大限に引き出すことが可能な構造となっています。

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