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生産現場 人手作業の自動化
これからのロボット導入に必要な勘所とは?
ロボット導入が進まない要因と対策
人手不足が進む日本社会において、人手作業の自動化は急務となっています。この背景から、多くの企業が積極的にロボット導入を進めています。本記事では、ロボット導入に必要な考え方を2話にわたって詳しく解説します。
ロボット導入を阻む2つの要因
生産現場における人手不足対策として、多くの企業がロボット導入を検討・推進しています。しかし、ロボット導入の検討を始めたもののうまく進まないとお悩みの方も多いのではないでしょうか。
その要因は2つあります。「現在の製品において工程の自動化が難しい」という点と、「投資回収の見通しが立たない」という点です。製品や工程によって状況は異なりますが、最終的にはこの2つの要素で判断されることが多いです。
一方で、「自動化が可能」かつ「投資回収が見込める」場合は、どの企業でも喜んでロボット導入を進めるのではないでしょうか。
ロボット導入がうまく進まない要因
では、すでにロボットが導入されている現場と、導入が進まない現場の特徴は何でしょうか。ロボットが導入されている業界としては、「自動車」および「電気電子部品」があり、これらの業界では、日本全体でロボットの導入率が約30%となっており、両業界を合わせると60%以上にもなります。
共通する特徴としては、「少品種大ロット」と「ロボットが行う作業を限定している」という点が挙げられます。
一方、ロボット導入が上手く進んでいない業界としては、「鋳物」、「物流」、「食品加工」などさまざまな業界がありますが、これらの業界の共通する特徴としては、「多品種小ロット」と「ロボットに置き換えたい作業が複雑もしくは複数」という点が挙げられます。
解決のポイントは「技術」ではなく「取り組み方」
なぜこのような特徴の差がロボット導入に影響するのか、それをロボット導入に必要な検討内容から紐解きましょう。
ロボットを導入するためには、まず置き換えたい作業が自動化可能かどうかを「成立性」の観点で検証し、次に必要な機器や設計、システムなどの「コスト」を明確にする必要があります。
実際のロボットは人間のように器用な手を持っていたり、自己判断や視覚的な感覚修正ができるわけではありません。 そのため、ロボット導入時には、取り扱うワークや作業に対して以下の要素を考慮する必要があります。
例えば、エンドエフェクタ(ロボットハンド)の選定、ビジョンシステムや各種センサを使用した視覚や感覚の補正が必要かどうか、 もしロボットだけでは作業が不可能な場合は、治具や位置決め装置、移載装置などの付帯機器の製作が必要となります。
さらに、これらを制御するシステムや必要なレイアウト、タクトタイムなども検証する必要があります。 取り扱うワークや作業の組み合わせが多くなればなるほど、検討や検証、および必要な付帯設備が増え、それに伴ってコストも増加します。同様に、技術的な難易度も上がり、結果としてロボット導入の実現が難しくなっていきます。
ロボット導入時の検討内容
組み合わせを比較すると…
ロボット導入が進まない作業の組み合わせが多い現場には、導入を進めるために重要な2つのポイントがあります。
【ロボット導入を進めるための2つのポイント】
- ロボットに置き換える作業を絞る
- 費用対効果を出す
まず、1つ目のポイントでは、ロボット導入に関わるコストを削減し、技術的な難易度を下げるために、作業を絞り込むことが重要です。これにより、実現性を高めることができます。
しかしながら、作業を絞ることによって作業時間は減少しますが、人員削減が行われない場合、費用対効果が見込めない状況に陥る可能性があります。投資する上で、投資した費用以上の効果を出すことは非常に重要であり、通常は投資しないという判断がされます。
したがって、ロボット導入を判断する際には、2つ目のポイントが重要となります。つまり、人員削減が行われないことを踏まえた上で、費用対効果を出す方法を考える必要があります。このような矛盾を乗り越えるために、ロボット導入の真髄である導入効果を検討することが必要です。
事例から考える導入効果のシナリオ
では仮想の工程を元にロボット導入における効果を検討してみます。
工程
製造工場内で仕分け・ピッキング・出荷を行っている
現場
① 軽量x多品種取扱いは1名x2工程 計2名
② 重量品x少品種取り扱いは2名x1工程 計2名
※①、② ともに作業者は共通
ターゲット
対象物・作業を絞り、②の重量品x少品種部分の仕分け・ピッキングを自動化する
今回のロボット導入により、作業者は減りませんが、以下のようなメリットがあります。
1. 「2名の作業ボリューム減」
作業者の負荷軽減と生産性向上が期待されます。具体的には、残業代の削減や、残業がない場合は他の業務に時間を割くことができ、生産量の向上や改善活動に時間を充てることができます。これにより、生産コストの削減と生産量の増加という利益につながります。
2. 「重量物取扱い作業の廃止」
重量物の取扱いによる労働災害や労働者の体調不良を回避することができます。(例:腰痛、挟まれ)また、重量物を扱わないことにより、体力的に制約のある人材の雇用が容易になり、採用率の向上にもつながります。これにより、労災リスクの回避や多様な人材の活用による組織の強化が期待できます。
本事例のロボット導入効果
ロボット導入の費用対効果は、導入コストに対して利益改善と利益改善以外の効果を考慮して検討する必要があります。重要なのは、総合的な視点で費用対効果の高い工程や現場を選択することです。
ロボット導入の際には、作業者の削減の有無や、作業時間の削減量を重要視して検討するケースが多いです。しかし、先述の例に示されたように、労災対策や離職率の低減、採用率の向上など、さまざまな導入効果も得ることができます。
総合的な導入効果を考慮することによって、ロボット導入を進めたい作業や工程の選択方法や費用対効果の考え方が大きく変わり、それにより、ロボット導入を推進しやすくなります。
次回のテーマでは、ロボット導入効果について詳しく掲載します。