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【画像処理マスターへの道】
二光束干渉が切り拓く3次元計測と、画像処理を支える最新ライティング技術
―― CCS × TED 技術対談「第2弾」
はじめに
前回の 第1弾 では、分割点灯照明(リング/フラットドーム)とフォトメトリックステレオ法の基本原理や使いどころ、評価段階での調整の勘所を中心に整理しました。
第2弾となる本稿では、そうして見えてきたフォトメトの“おいしいところ”と限界を踏まえつつ、二光束干渉法による高精度3次元計測や、大型フラットドーム/ハイパワーライン照明、ハイパースペクトルカメラ用のブロードバンド照明といった最新ライティング技術を取り上げます。
サンプル評価から実機導入へ進む際に生じがちなギャップを、照明と画像処理・AIの両面からどのように埋めていけるのかを、シーシーエス株式会社(以下、CCS)と東京エレクトロンデバイス(以下、TED)の対談を通じて具体的に紐解いていきます。
より高精度な3次元情報の可視化
フォトメトの得意領域と限界
フォトメトは、目視でも何とか認識できる程度の凹凸や傷を強調するのに非常に有効です。一方で、目視ではほとんどわからないレベルの微小な凹凸や、光沢を伴う複雑な表面になると、従来構成のフォトメトだけでは対応が難しくなることもあります。
こうしたケースでは、平行度可変照明などを用いて入射角を精密に制御し、特定の微小凹凸だけを選択的に強調したり、二光束/微分干渉のような干渉系の手法を組み合わせることで、サブミクロンオーダーの凸凹情報を可視化していく取り組みも進められています。
二光束干渉法による3次元計測
従来のフォトメトでは対応が難しかったサンプルに対する、計測の方向からのアプローチの一つが二光束干渉ユニットによる3次元計測です。
「開発中の二光束干渉ユニットでは、白色干渉と同じ原理を使って、高さ分解能を1um程度に抑える代わりに、15mm角などの大幅に広い視野を実現しています。干渉を生じさせる対物レンズは独自設計しました」(CCS社)
高さ分解能1umというのは、位相シフト法や光切断法などでは不足し、白色干渉の1nmではオーバースペックとなる谷間ながら、意外とニーズのあるレンジです。
二光束干渉であれば、対象物は鏡面からセラミックなどの拡散面まで幅広く対応でき、カメラ構成の自由度も確保できます。さらに、3次元データだけでなく2次元画像のRAWデータも同時に出力できるため、通常の画像として扱って2次元検査と両立できる点も大きな魅力です。

二光束干渉ユニット(開発中)の概要
サンプル評価と実機導入のギャップ、照明開発の最前線
よくあるサンプル評価から実機導入への躓きと、その解消に向けての照明開発の取り組みを伺いました。
「もちろん評価時点から実機サイズを意識したライティング設計を行うことが、導入フェーズでの「やり直し」を減らすポイントです。とはいえ、標準製品には無いものが欲しくなることもあることも事実です。そうしたニーズから開発された照明の中から、まさにそういうものが欲しかったと思う2機種をピックアップしてご紹介します。」(CCS社)
小さな評価サンプルと大きな実機ワーク、フラットドーム照明
評価段階では、大きなワークでは持ち運びも大変なので、欠陥部分の周辺を切り出した小さなサンプルをお預かりするケースが少なくありません。しかし、評価結果を実際のラインに導入するには、「評価ではうまくいったが、実機サイズを考えるともっと大きな照明が必要になる」という状況もよくあります。
「フラットドーム照明は標準製品では300mm角までしかありませんでしたが、リードフレームや300mmウェーハなど、もっと広いエリアを一度にカバーしたいというお客様からのご要望にお応えすべく、さらに大型の480mm角を開発中です」(CCS社)
また、従来のフラットドーム照明では、対象物を包み込むように光を照射するランバーシアン配光を実現するため、導光板の表面に白いドットを印刷されていました。ところが、解像度を高くしようとすると、この白いドットが映り込んでしまい、画像処理でキャンセルする場合にも、映り込みと重なってしまった欠陥の検出や映り込みより微細な欠陥の検出などに影響を与えてしまうことがありました。
「最新のLFXVシリーズでは、白いドットではなく独自の特殊なディンプル形状を採用することで、この点を改善しています」(CCS社)

フラットドーム照明LFXVシリーズの特長
高速ラインスキャン、自然空冷のハイパワーライン照明
ラインスキャンカメラのスキャン方向の解像度は、スキャン周期に依存します。特に高速に移動する対象物を高解像度で撮像する際には、スキャン周期を上げる必要があり、その結果として1ライン当たりの露光時間は必然的に短くなり、画像は暗くなります。
画像処理で明るく補正することはできますが、カメラのセンサの感度の単位未満で失われてしまった(センシングされていない)差異を復元することはできないので、安定的な自動検査には欠陥とその他の明るさの差を大きく取れることが理想です。このため、より高速で高解像度な検査では、より高輝度な照明が不可欠です。
「新開発のLN2シリーズは、従来比5倍の明るさで、自然空冷タイプとしてトップクラスの輝度を実現しています」(CCS社)
高輝度なライン照明というと、ファンを搭載した強制空冷タイプが主流ですが、その分サイズが大きくなり、装置設計への影響も無視できません。LN2シリーズでは、LED素子だけでなくレンズの独自設計も駆使することで、自然空冷の扱いやすさと明るさの両立を実現しています。

ハイパワーライン照明LN2シリーズの特長
ハイパースペクトルカメラで「色」と「材料」を見る
ハイパースペクトルカメラ用 LED照明の作り方
ハイパースペクトルカメラ用の照明には広い波長帯が求められるため、現在でも従来型のハロゲン照明が多く使用されています。一方で近年は、構成の工夫によりLED照明でも広い波長帯をカバーできるようになってきました。ハロゲン照明に比べて発熱や寿命に関する懸念を軽減できる点が、LED化の大きなメリットです。
「自然光に近いブロードな帯域を狙ったタイプと、赤外域をしっかりカバーするタイプと、大きく二つのパターンがあります。後者は特にプラスチックの材質選別をターゲットに開発を始めました。初期の製品では、他社製の赤外LEDチップを多数並べることで、限られた出力の中で波長範囲を稼いでいましたが、最近ではCOBタイプのLEDを自社で設計・実装することで、より効率的に広い波長帯を実現できるようになってきました」(CCS社)

ブロードバンド照明の特長
絶対値ではなく「分光特性」を見る
ハイパースペクトルカメラも、一般的なカラー検査と同様に照明の明るさやカメラ感度の影響を受けますが、本質的には「明るさの絶対値」ではなく「物質ごとの分光特性(スペクトルの形)」を見るためのツールです。
照明を暗くすると画像上の数値は全体的に下がりますが、それが「照明が暗くなったため」なのか、「物体側の特性が変化したため」なのかは、画像の絶対値だけでは区別がつきません。ここは通常のカラー検査と同様で、環境を一定に保ち、キャリブレーションをきちんとかける必要があります。
実際の運用では、まず分析用のハイパースペクトルデータから特徴波長やしきい値を見つけ、その結果をもとに量産ラインではカラーフィルタなどを駆使して、よりシンプルなカメラ・照明構成で検査する――という使い分けが現実的です。
「ハイパースペクトルカメラだけですべてを絶対値までやろうとすると、コストも手間もかなりかかります。分析フェーズでハイパースペクトルカメラを使い、量産では相対的な差を見分ける仕組みに落とし込む、というのが実務的なバランスだと考えています。実運用でもハイパースペクトルカメラが必要になるのは、膜厚測定などの特殊な用途がほとんどですね」(CCS社)
おわりに
本記事では、フォトメトリックステレオ法の得意領域と限界を起点に、二光束干渉法による高精度な3次元計測、サンプル評価と実機導入のギャップを埋める最新照明技術、さらにハイパースペクトルカメラによる分光情報の活用まで、外観検査の現場で直面する課題とその解決策を解説しました。
さて、第1弾と第2弾の全2回でCCSとTEDの技術対談を通じて、
- 分割点灯照明(リング/フラットドーム)とフォトメトの使い分け
- フォトメトの使いどころの見分け方
- 評価から導入に進む際の典型的なハードルと、その乗り越え方
- 大型ワークや移動体への対応
- より高精度な凹凸の可視化に向けた取り組み
- 実ラインの課題を解消する最新の照明技術
- ハイパースペクトルカメラでの分光情報活用と、その現実的な位置づけ
といったトピックを取り上げました。
ひとくちに「凹凸のある欠陥の可視化」といっても、対象物の材質・形状・サイズに加え、ライン速度や設置制約によって直面する課題はさまざまです。分割点灯リング照明が苦手とする立体的な光沢面にはフラットドーム照明があり、高速で移動する対象物にはRGBワンショットやQuad Shutter Control、ラインスキャンといったアプローチがあります。豊富なライティングバリエーションを持つCCSと、画像処理・AIを得意とするTEDが組み合わさることで、「一度は諦めた検査」に対しても、新たな解決策を見いだせる可能性が広がります。
ライティングの工夫で「見える」ようになったその先は、TEDの役割です。フォトメトや画像処理ライブラリの各種フィルタ処理を組み合わせて自動検出アルゴリズムを構築し、それでも難しい場合には、多視点画像分類やアノマリー検出といったAI手法も組み合わせていきます。
今後もCCSとTEDは、ライティングと画像処理の両面から、外観検査におけるお客様の課題解決に取り組んでまいります。
本記事が、外観検査の高度化やフォトメト導入をご検討されている皆さまの一助となれば幸いです。

デモ見学させていただいたテスティングルームで記念撮影
会社名 シーシーエス株式会社本社所在地 京都市上京区室町通出水上ル近衛町38
代表 大西 浩之(代表取締役社長)
WEBサイト https://www.ccs-inc.co.jp/
関連製品
画像処理ライブラリ FAST Vision Library for LNX(LNX向けライブラリ)
画像処理ライブラリ FIE for Linux / FTL for Linux(Linux向けライブラリ)
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画像処理ライブラリ PyFIE(Pythonラッパーライブラリ)
画像処理ライブラリ FV-AID / WIL-PDL(AI開発ツール、WIL推論ライブラリ)
画像処理ライブラリ FIE for Raspberry Pi(ARM対応ライブラリ)
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