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業務用映像機器に不可欠!SDI伝送技術とは

ストリーミング放送や、映像コンテンツを作成する裏方仕事を支える伝送技術としてSDI(シリアルデジタルインターフェイス)は業界標準として長い間、映像・放送業界に貢献しています。放送と通信の融合の元、IP化が進むなかでも、まだまだその需要は旺盛です。加えて近年では医療業界やセキュリティ業界での採用実績も増えています。そんなSDIですが実際の設計や開発現場に思わぬ落とし穴があります。

ここでは多様な業界で使われているSDI伝送について半導体レベルの機能から解説し、その実績や応用の用途について解説します。

 

 


 

SDIとは

SDI(Serial Digital Interface)は、もともとは放送機器間の映像のケーブル伝送を目的に実用化されました。

映像信号を圧縮してしまえば、低いレートで伝送することができますが、画質の劣化と伝送遅延が発生してしまいリアルタイム性を求められる現場には向いていません。

SDIは映像信号を非圧縮のまま運用することで遅延のない伝送を実現し、またケーブル損失を補償することで長距離伝送を実現可能にします。

一方で、メーカーは機器間の接続性を担保するためにも規格に準拠したSDIを実装することが求められます。

 

 


 

SDIの種類と規格

標準画質映像を伝送するSD-SDI、高精細画質のHD-SDIと3G-SDI、いわゆる4Kの6G-SDIと12G-SDIに大きく大別され、SMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers)が伝送レート別にSDI規格を策定しています。

また、ケーブルを複数本使って伝送するDual Link、Quad Linkのほか、ビデオフォーマットや音声データ、補助データなども伝送規格と分けて規格が発行されています。

 

SDIの種類と伝送規格

主なSDIの種類 代表的なビデオフォーマット 伝送レート SMPTE伝送規格
SD-SDI NTSC, PAL 270 Mbps ST 259:2008
HD-SDI 1080i/59.94, 720p/50 1.485Gbps, 1.485/1.001Gbps ST 292-1:2011
Dual Link HD-SDI 1080p/59.94 ST 372:2017
3G-SDI 1080p/59.94, 720p/50 2.97Gbps, 2.97/1.001Gbps ST 424:2012
Quad Link 3G-SDI 4K/60p ST 425-5:2019
6G-SDI 4K/30p 5.94Gbps, 5.94/1.001Gbps ST 2081-1:2015
12G-SDI 4K/60p 11.98Gbps, 11.98/1.001Gbps ST 2082-1:2015

 


 

SDIの長距離伝送

SDIの伝送長は100mが業界標準と言われていますが、規格上は距離ではなく減衰量で規定されています。SDIレシーバが補償するケーブル損失はHD/3G-SDIで最大20dB、6G/12G-SDIで最大40dBとSMPTEは定めています。

こちらの表は代表的なBNCケーブルの100m当たりの標準減衰量です。値が大きいと損失も大きくなります。

 

SDIの種類ごとの減衰量の例

SDIの種類 HD-SDI
(750MHz)
3G-SDI
(1.5GHz)
6G-SDI
(3GHz)
12G-SDI
(6GHz)
減衰量
[dB/100m]
18.0 26.2 38.6 58.1

 

例えばHD-SDIを100m伝送したときに18dBの損失が生じます。規格では20dBまでの損失補償を定義しているため、規格に準拠したSDI機器とケーブルの組み合わせだと100mの伝送が可能と言えます。一方、12G-SDIを同じケーブルで伝送しようとすると70mほどで40dBの減衰に達します。

これらのケーブル損失を補償するためのSDIデバイスがにケーブルイコライザとリクロッカです。近年のBNCケーブルやSDIデバイスの性能向上により、SD-SDIやHD-SDI、3G-SDIにおいては100m以上の伝送や、損失の大きい細いケーブルでの運用も可能となっています。

 

SDIの長距離伝送

 


 

長距離伝送の実現方法(ケーブルイコライザ編)

ケーブルイコライザ(CEQ: Cable EQualizer)はケーブル伝送で減衰してしまった信号振幅を補正するデバイスです。オート・ゲイン・コントロール(AGC: Auto Gain Control)を備えていて、減衰量に関係なく一定の振幅値に復元します。

例えば、3G-SDIを100m伝送したときのケーブル損失は26.2dBですが、ケーブルイコライザはAGCにより26.2dBのゲインで信号を復元します。同様に、HD-SDIを50m伝送したときは9dBのゲインで復元します。

ケーブルイコライザは大きなゲイン特性を持つことからノイズの影響を大変受けやすいデバイスです。また、AGCが適切に動作するためには適切なインピーダンスコントロールが要求されます。

 

長距離伝送の実現方法(ケーブルイコライザ編)

 


 

長距離伝送の実現方法(リクロッカ編)

ケーブルイコライザは縦成分(振幅)を補償しますが、横成分(ジッタ)までは補償できません。

このジッタ成分を除去するのがリクロッカ(RCK: ReCLocker)です。

基本的な仕組みはクロック・データ・リカバリー(CDR: Clock Data Recovery)と同じで、入力信号からクロック成分を抽出して信号のタイミングを取り直しますが、SDIのマルチレートに自動でロックする点が通常のCDRと大きく異なります。

電源ノイズは出力ジッタに直結しますのでパワーインテグリティが求められます。

 

長距離伝送の実現方法(リクロッカ編)

 


 

SDIの出力ポートに使われているデバイス

SDIの主要デバイス:ケーブルイドライバ

SDI伝送を確立するためには入力側で補償するだけでなく出力側の信号波形も整形する必要があります。

ケーブルドライバ(DRV: cable DRiVer)はSDI規格で定義された信号振幅や信号の立ち上がり/立ち下がり速度を規格に準拠させるドライブ能力の高いデバイスです。

インピーダンスのミスマッチは波形の歪みの原因になるためレイアウト設計が重要視されます。また、ほかのSDIデバイスと同様に電源ノイズの影響を受けやすいデバイスです。

 

SDIの主要デバイス:ケーブルイドライバ

 


 

その他のデバイス

映像信号や音声信号をSDI規格に準拠したシリアルデータに変換するデバイスをシリアライザ、逆にSDI信号を映像信号や音声信号に復元するデバイスをデシリアライザと呼び、これらを合わせてSerDesと呼称します。

SerDesは専用ICだけでなくFPGAでも設計可能で、各FPGAメーカはSDI SerDesのIPを提供しています。

一方、専用ICはイコライザやドライバを内蔵した製品も用意されています。残念ながら6G-SDIや12G-SDIに対応した専用ICは製品化されておらず、FPGAで設計する必要があります。

 

SerDes

 


 

SDIは相互伝送ができるか

SDIには相互伝送という概念がなく、送信側から受信側への一方通行です。

しかしながらSDIポートを入力としても出力としても利用できる特殊なデバイスが各半導体企業からリリースされていて、一部のコーデックやコンバータ、SDIボードのバリエーションに採用されています。

双方向(Bi-Directional)なのでBiDi(ビディ)とも呼ばれます。

入力と出力は自動で切り替わらず、ユーザーが都度設定します。また、入出力を切り替えるときは対向の入出力も切り替える必要があります。

 

BiDi

 


 

 

光伝送装置を使用した伝送方法

SDIはリピーター装置を使うことで100mを超える伝送が可能ですが、キロメートルオーダーで遠くに伝送させたい場合は光伝送装置が使われます。

EOモジュール(Electric to Optical Module)はSDI信号を光ファイバーで伝送する装置で、OEモジュール(Optical to Electric Module)は光ファイバーで伝送された信号を復元する装置です。

Media over IP(MoIP)とは異なり、SDIのプロトコルがそのまま使われます。

 

光伝送装置を使用した伝送方法

 


 

SDIデバイスを使用した開発実績

8Kスーパーハイビジョン非圧縮記録装置やSDIデバイスとして取り扱っているTI社とFPGAを使った、評価ボード・開発キット12G-SDI FMCカードをリリースしている他、SDIデバイスを使った設計開発の実績があり、ノウハウを蓄積しています。

 

12G-SDI FMCカード
12G-SDI FMCカード
開発実績 8Kスーパーハイビジョン 非圧縮記録装置
開発実績 8Kスーパーハイビジョン
非圧縮記録装置

 

【関連ページ】

 


 

まとめ

SDIは放送業界の厳しい伝送要求を実現するために専用ICと高度な設計スキルが求められます。

また、放送業界の枠を超えて医療機器、災害監視、ライブエンターテイメントといった多様な業界でも支持されています。東京エレクトロンデバイスは、豊富な開発実績、熟練の商社経験と最新のご提案で開発をご支援いたします。

 

 

 

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