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医療機器装置の改善ポイント
【光トポグラフィ装置編】
光トポグラフィ装置は、脳卒中や頭部外傷などの脳障害の評価に有用です。この技術は、脳の障害の程度や位置を特定することができ、臨床医は適切な治療法を選択するための情報を得ることができます。今回は光トポグラフィ装置におけるDLP®デバイスの活用メリットについてご紹介します。
目次
光トポグラフィ装置とは
光トポグラフィ技術は、近赤外分光法(NIRS:Near Infra- Red Spectoroscopy)により、微弱な近赤外光を用いて大脳皮質部分を計測し画像化する技術です。この技術は、身体への負担が少なく、より日常に近い環境で脳の活動を「見える化」することが可能です。
計測原理としては、頭部に3cm間隔で光源と受光センサを配置し、どの部分に活動変化があったかを可視化します。使用される近赤外光は、人体組織を通り抜けるがヘモグロビンには吸収されるという特性を持っており、脳神経が活動すると酸素とグルコースが必要になるため、脳活動が活発な部位ではヘモグロビンが増加し、近赤外光の透過度は減衰します。光トポグラフィ技術はこの光の変化量を測定することにより、脳の活動を可視化するものです。
安全性が高く、放射線や薬品を使わずに計測が可能なため、医療診断の補助やうつ症状の鑑別診断補助など、さまざまな場面で利用されています。また、言語機能の診断やてんかん焦点の同定など、脳機能に関わる臨床分野での応用も期待されています。
DLP®とは
DLP®はDigital Light Processingの略称で、DMD(Digital Mirror Device)と呼ばれる小さな鏡のアレイを使用して光を制御する技術です。DMDは多数の微小なミラーで構成されおり、各ミラーは個別に制御され、光の反射角度を変えることができます。DLP®技術は、プロジェクター、テレビ、3Dプリンター、光トポグラフィ装置など、さまざまなデバイスに使用されています。
詳しくは眼底カメラ編でご紹介していますのでこちらをご覧ください。
DLPⓇ技術の光トポグラフィ装置への応用
DLP®技術を光トポグラフィ装置へ応用することで、より高精度かつ迅速な測定が可能になります。DLP®技術を活用した光トポグラフィ装置の動作の流れを以下に示します。
光源の発光
光トポグラフィ装置では通常、近赤外線(NIR)領域の光が使われます。ここで使用するDLP®製品もNIR領域に対応したデバイスを選定します。
光の投射
DLP®技術により、ミラーを高速で制御して光を特定のパターンで投射します。これにより、脳の特定の部位に光を正確に当てることができます。
光の透過と反射
投射された光は頭皮を通過し、脳の表面に達します。その一部は脳の組織によって散乱され、残りは反射されます。これにより、脳の血液の酸素飽和度に応じて光の強度が変化します。
検出器による光の受光
頭皮に取り付けられた検出器(フォトダイオードなど)が反射光を受け取ります。この受光データはデジタル信号に変換されます。
データの解析
受光したデータはリアルタイムで解析され、血流の変化がマッピングされます。DLP®技術を使うことで、複数の部位を迅速かつ正確にスキャンできるため、高解像度のトポグラフィが可能です。
結果の表示
解析されたデータはモニターに表示されます。これにより、研究者や医療従事者は脳の血流の動態を視覚的に把握することができます。
このように、DLP®技術を利用することで、従来の光トポグラフィ装置よりも高精度かつ迅速な測定が可能になり、脳の血流変化をリアルタイムで詳細に解析することができます。
DLPⓇ活用のメリット
DLP®技術を光トポグラフィ装置に組み込むことで、以下のような利点が挙げられます。
高精度な光制御
DLP®技術により、光を正確に制御できるため、特定の脳領域に対して正確に光を投射できます。これにより、精度や信頼性の高いデータを取得できます。
高速スキャン
DMDを使用することで光を高速で切り替えることが可能になります。これにより、広範囲の脳領域を迅速にスキャンでき、リアルタイムでのデータ取得が容易になります。
高解像度
DLP®技術は非常に高い解像度を提供します。これにより、微細な血流変化や脳活動の詳細を高精度でマッピングすることができます。
多様な光パターンの生成
DLP®技術を使用することで、多様な光パターンを簡単に生成できるため、異なる研究ニーズに対応したカスタマイズが可能です。例えば、特定の脳機能領域に合わせたパターン投影が可能です。
耐久性と信頼性
DLP®技術は機械的な可動部分が少なく、耐久性に優れています。長期間の使用でも安定した性能を発揮するため、信頼性の高いデータを継続して取得できます。
柔軟な波長選択
DLP®デバイスは、異なる波長の光を生成できるため、特定の脳活動や血流動態に対応した最適な波長を選択できます。これにより、測定の感度と特異性が向上します。
非侵襲的
高精度な光制御が可能でありながら、非侵襲的であるため、被験者への負担が少なく、安全に使用することができます。
コスト効率
DLP®技術は他の高精度光制御技術に比べてコスト効率が良い場合があります。これにより、研究や医療での広範な利用が可能になります。
DLP®技術のこれらのメリットにより、光トポグラフィ装置は高精度で迅速な脳機能解析が可能となり、脳研究や臨床応用において非常に有用なツールとなります。
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