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導入事例

生産現場 計測・検査

「目利き」はAIに任せる時代へ
~アスパラの個体差を見抜く、AIの“目”が現場に~

ご提案製品
AIプラットフォーム

FV-AID / WIL-PDL(AI開発ツール、WIL推論ライブラリ)

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ナビック株式会社様

岡山市にあるナビック株式会社では、精密加工技術をベースに、各種電気部品の試作加工、治具・工具の設計製作から、産業機器(省力化機器)・農業機器の開発までを手がけています。アスパラ(アスパラガス)など、形状が不揃いなため省力化が難しいとされてきた農作物の、省力化装置の開発・製品化を実現してまいりました。現場で作業する立場に立った製品は、現在では全国の出荷現場から高い評価を得ており、納入実績を拡大し続けています。
同社は「アスパラ選別機」にこれまで、ルールベースの画像処理で自動化をおこなっていました。
今回、さらに一歩進んだ自動化としてアスパラの穂先の開き具合の選別機能を、東京エレクトロンデバイス(以下、TED)の「AIプラットフォーム」(AI開発ツールFV-AIDとWIL推論ライブラリWIL-PDL)を活用しました。

課題

・選別工程のうち、アスパラの穂先の開き具合の評価において、従来のルールベースの画像処理では、人の目による評価と乖離する場合があった

成果

・アスパラの穂先判定の精度向上を実現
・顧客視点でのアスパラ評価基準の構築を実現

この記事を読んでほしい方

・農作物・食品の選定や仕分けをAIで自動化したい方
・現在、人の目に頼っている作業に課題を感じている方
・他社システムの精度に満足していない方

インタビュー

――「アスパラ選別機」とはどのような機械か教えてください。

アスパラ選別機

アスパラ選別機

 

「アスパラ選別機」は、アスパラの外観を画像処理技術でランク分けするシステムです。太さや長さ、曲がり具合などの寸法と、断面の丸さや穂先の生育具合などの良し悪しによって選別します。最良品とされるのは、穂先が締まり、丸々と育った大きなアスパラで、高級レストランなどで使用されるので高価で取引されます。

アスパラ選別機の販売先は全国の農協が中心で、利用者はゆっくり動くバケットにアスパラを載せるだけで、定寸カットしアスパラを規格に基づいてランク別に選別することが可能です。

納品先の農協ごとにアスパラの出荷規格が異なりますが、タッチパネルで簡単に納品先別の規格基準を切り替えることができ、誰が使っても迷わず運用できる仕組みになっています。

 

アスパラの外観を画像処理技術

 

全国の出荷現場から高い評価を受けているこの「アスパラ選別機」に、業界で初めてAIを導入しました。導入は「穂先の開き」という正確な評価が難しかった部分です。

 

“決まりルール“の壁を越えた、AIによる新しい選別

 

――AIを導入する前は、どんな課題がありましたか?

 

これまでも「ルールベース技術」を使った仕分けを行ってきました。「ルールベース」とは、定量化された数値に基づいて動作するシステムのことで、サイズや長さ、角度などの基準に従った選別を得意としています。

しかし、アスパラの「穂先の開き具合」の選別は、微妙な個体差が複合的に重なり合うため「ルールベース」での定量化された仕分けではなかなか良い数値が得られませんでした。

ピークの時期には毎日数トン(10万本以上)ものアスパラを選別しています。仮に人による選別の場合、どうしても作業者や作業時間によって判断基準にばらつきや見逃しなどが生じてしまうこともあります。この課題に対し、AIであれば人間の主観評価をうまく点数化できて、判断基準の一定化を実現できるのではないかと私たちは考えました。AIは、人が感覚で判断するような微妙な違いを捉えるのが得意です。

そこで私たちはルールベースとAI、それぞれの長所を検査項目によって使い分ける形で運用することを決めました。

 

AI導入までのスムーズな道のり

 

――AIを導入するまでの道のりを教えてください

 

AI導入の1年前からかなり勉強を積み重ね、導入の下地を作っていました。

「AI導入が将来的に大きな負担軽減につながる」という確信がありましたし、そうなって欲しいように正しく分類して学習させればAIでこれらの課題を解決できそうだという見込みもありました。大事なのはAIに学習させるデータの準備になるだろうという想像もできていました。画像の分類はとても手間が掛かる作業で苦労を伴いますが、この作業を大切に根気よく行うことは非常に重要です。

また 政府方針のスマート農業化による補助金の後押しもあり、お客様のAIに対する期待は大きく、導入に対し前向きに検討いただきました。

TEDの「AIプラットフォーム」を使用し、本格的にAI導入を進めました。AI部分だけの提供でなくて、AI・カメラ・画像処理装置一式を一貫して提供していただけることや導入後も継続してその時代時代に合った形で画像装置を提供する包括的なサポート体制が整っていることが決め手です。

 

AIに覚えさせるのは正直大変。でも、精度が違う

 

――AI導入時の学習プロセスについて教えてください。

 

AIに学習させるデータの収集には既存の装置を導入いただいているお客様にご協力いただいて1万枚以上のアスパラの画像を集め、選別の規格にあわせて分類を進めました。

学習データの分類の精度がそれを学習したAIの精度に直結することは想像できていましたが、実際に取り組んでみると大量の画像を正しく分類するのは大変ではありました。朝に分類した結果を夕方に見直すと、自分でもどうしてそうしたのかわからなくなることもしばしばで、いわば「一日の中で価値観が変わる」ような体験でした。

 

特に穂先が締って、丸みを帯びた最良品と、穂先が育成不良で丸みを帯びた奇形品は、シルエットでは判別が難しいです。この学習を集中して行ったところ、ほぼ100%の識別が可能となりました。「これは不良にしたいよね」という感覚に近い判断まで、AIが人間と同じ判断をすることは嬉しい驚きでした。

この嬉しい驚きでAI選別の実現性に自信を持てたからこそ、学習データの分類を何度も見直して正していくという大変な作業にも、その先にAI選別の実現という希望の光を見て頑張れたと思います。

 

アスパラの識別条件

 

最終的には各分類の画像の枚数のバランスを調整した7000~8000枚を学習したモデルを使用することで、アスパラ選別機へのAI搭載に至りました。

お客様によってはもっと別な分類もしたいとのご意見を頂くこともあります。そのようなときには、お客様ご自身で実現したい分類を行っていただき、そのデータを当社がお預かりして学習させたAIモデルをご提供するということも考えています。

 

――最後に、今後の展望を教えてください。

 

今後は、業界の長年の課題であるアスパラのキズの有無を自動で判断する機能も目指していきたいです。また ブロッコリーやトマトといった他の農作物でも応用を進めたいと考えています。農作物の中には、人間の目に頼らざるを得ない作業が多いですが、この作業はAIにとても合っていると思います。

「人の目でしかできない」と思われていた工程も、AIを活用することで新しい可能性が広がると私たちは考えています。

お客様プロフィール

会社名
ナビック株式会社
所在地
岡山県岡山市東区福治598-1
設立
1970年7月
代表
安藤 栄章
お問い合わせ先
TEL:086-943-1115
FAX:086-943-2442
mail:navic@navic-kk.co.jp
WEBサイト
http://www.navic-kk.co.jp

ご担当者様の声

左から、開発部 片山様、代表取締役 安藤様、開発部 中西様

記事は 2025年7月 取材・掲載のものです。

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