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導入事例

設計 評価ボード・開発キット

クリエーターが思い描いた
プロジェクションマッピングを
世界最速レベルの「超高速プロジェクタ」で実現する

ご提案製品
研究開発用途 超高速プロジェクタ DynaFlash 製品外観

研究開発用途 超高速プロジェクタ DynaFlash

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anno lab様

課題

  • 水滴一滴ごとに異なる映像を投影したい
  • 自由落下する水滴の位置を算出して、投影のタイミングを同期させたい
  • 映像投影には輝度とカラーが必要

成果

  • 自由落下する水滴に正確に遅延なくプロジェクション

特徴

  • モノクロ時/Max 1000fps8bit階調、カラー時/Max 925fps24bit階調で投影が可能
  • 独自のFPGAによる高速制御回路
  • DLP® DMD(Digital Micromirror Device)と高輝度HLD光源

インタビュー

流れ落ちる水滴をスクリーンにする

 

水が踊る
暗い部屋の中で、水の玉が空中に浮かんでいる。
触れようとすると、手を避けるように自由に動く。

 

福岡を拠点に活動するクリエイティブ・ラボ「anno lab(あのラボ)」(以下、anno lab)が企画展示した豊後高田市にある長崎鼻リゾートキャンプ場内「不均質な自然と人の美術館」「海の部屋」では、anno labが東京エレクトロンデバイス株式会社(以下、TED)の製品である、超高速プロジェクタ『DynaFlash』を利用して、落下する水滴にプロジェクションマッピングを行い、あたかも水滴が空中でアニメーションをしているような錯視を利用したアート作品が展示されています。

 

「不均質な自然と人の美術館」では、テクノロジーを用いて自然との触れ合いを拡張するというコンセプトのアート作品が展示されています。

 

「通常の美術館は、いつでも同じ体験ができるように設計されています。それに対して、自然は元来、不均質なものです。テクノロジーを利用して、不均質な自然の新しい見え方を示すことができる、レンズのような美術館を目指しました。自然と連動した作品たちはその時々で形を変え、二度と同じ表情にはなりません。海の部屋の演出は、館の周りの潮位情報や天気の情報を元にゆるやかに変化し、来場者は変化していく作品を構成する水滴に直に手で触れることで、自然の不均質性がもたらす美しさを体感できます。」(anno lab代表 藤岡氏)

 

「一定の間隔で落ちてくる水滴にストロボを当てて、水滴が空中で止まって見えたり、下から上に移動するように見せるウォーターパール*1という技法には以前から興味がありました。従来の技法では、すべての水滴に同時に光を当てていましたが、一滴ごとに領域を区切ったスポットライトを、それぞれ異なるタイミングで投影したいと考え、実現する方法をリサーチしていました」(藤岡氏)

 

リサーチしていく中で藤岡氏が出会ったのが、東京大学の石川渡辺研究室*2の動画*3でした。そこで使用されている超高速プロジェクタ『DynaFlash』について藤岡氏がTEDに問い合わせたのは2016年のことでした。

 

「当時のDynaFlashはモノクロで、輝度も不足していました。また、ウォーターパールの装置と合わせてプロトタイプを製作するには、予算が不足していました。」と藤岡氏は当時の実情を打ち明けます。

 

しかし、その後「不均質な自然と人の美術館」の開設が決まり、藤岡氏は再びTEDに問い合わせます。

 

「ちょうどカラーのDynaFlashが完成した時期で、予算も確保でき、非常に良いタイミングでした」(藤岡氏)

 

従来のウォーターパールと呼ばれる演出では、水滴発生装置とストロボで構成されていますが、光の照射範囲を限定できないため、全体の水滴に光を照射することしかできませんでした。「海の部屋」でのウォーターパール・プロジェクションマッピングでは、縦横約3 mの空間に上から落下してくる横40個×縦約24個の水滴に対して、世界最速レベルの超高速プロジェクタ「DynaFlash」の機能をストロボのように用いることで、水滴に対して個別にプロジェクションマッピングが可能になり、水滴と水滴の間でも、16分割の細かさで水滴を出現させ、16回に1回だけ真っ白な画像を水滴にスポットライトを投影し、その位相を明滅をずらして投影することで、水滴の一つ一つが上下に滑らかに動くアニメーションを可能にしました。

 

※図版1:ウォーターパール・プロジェクションマッピングの仕組み図1:ウォーターパール・プロジェクションマッピングの仕組み

 

 

※図版2:16回に1回真っ白な画像を投影

図2:16回に1回真っ白な画像を投影

 

 

図版3:位相による水滴アニメーションの実現図3:位相による水滴アニメーションの実現

 

 

ウォーターパール・プロジェクションマッピング説明動画

 

 

 

超高速プロジェクタがクリエイターの想像力を高める

 

東京大学の高速プロジェクションマッピングでは、スクリーンになる物体に「マーカー」を取り付け、その位置を検出して投影する仕組みになっています。

 

しかし、来館者が水滴に触れることができる「海の部屋」では、人がマーカーの検出を遮る恐れがありました。そのため、ウォーターパール・プロジェクションマッピングでは、自由落下する水滴の位置を算出して、投影のタイミングを同期させる方法を採用しています。

 

「DynaFlashとウォーターパールの装置を設置してから美術館のオープンまではあまり時間がなく、調整に苦労しました。TEDのエンジニアにも協力してもらい、感謝しています。従来の映像には実体がありませんが、触れることのできる水滴に投影することで、映像のピクセルを実体化したウォーターパール・プロジェクションマッピングは、新しい自然現象、新しいメディアを生み出せたと思っています。 理論的に可能なことは分かっていましたが、目の前で想像通りの光景が実現でき、感動しました。世界がまだ見たことのない現象を生み出したいと考える僕たちメディア・アーティストにとって、自由落下する水滴にすら正確に遅延なくプロジェクション可能な「DynaFlash」の革新的技術は素晴らしいプレゼントです。」(藤岡氏)

 

※図版3:『不均質な自然と人の美術館 海の部屋』 シーン“Tide”図4:『不均質な自然と人の美術館 海の部屋』 シーン“Tide”

 

藤岡氏はこのウォーターパール・プロジェクションマッピングを美術館や、空港のロビーなどの公共空間に設置するアート作品として広く普及させていきたいと、今後の展望を話します。

 

「マーカー検出用の赤外線を搭載したDynaFlashも開発中と聞きました。現在、構想している新しいプロジェクションマッピングを利用した作品で使用できそうなので、今から楽しみです」(藤岡氏)

 

新しいテクノロジーによって、クリエイターの夢が現実世界に投影される日はすぐそこまで来ています。

 

*1 ウォーターパール(水玉噴水):株式会社ウォーターパールの製品です https://www.waterpearl.co.jp/waterpearl.html
*2 当時の研究室名、現在は石川グループ研究室
*3 東京大学 石川グループ研究室動画 TED掲載ページ https://www.inrevium.com/product/tb-6v-dynaflash/#detail-3

 

anno lab 代表作品

 

太陽と月の部屋太陽と月の部屋

「不均質な自然と人の美術館」外観

不均質な自然と人の美術館」外観

お客様プロフィール

会社名
anno lab
所在地
福岡市中央区平尾4-13-12 anno lab
代表
藤岡 定
WEBサイト
https://annolab.com/

【“世界一楽しい街”を創りたい】anno lab(あのラボ)は、福岡を拠点に活動するクリエイティブ・ラボです。学術研究員、アニメーション作家、ゲーム開発者、広告代理店勤務、Fabマスター、映像ディレクター等の経歴をもつクリエイターが集まり、遊びゴコロいっぱいの新しい体験を生み出します。面白さや楽しさを初めとした知的好奇心を出発点にして、日常の中に新しい体験や価値を生み出していくためのクリエイティブを行っています。anno labの野望は、世界一楽しい街を創ることです。

ご担当者様の声

anno lab 代表取締役,アーティスト 藤岡 定 氏

「僕の好きな動画にスウェーデンのフォルクスワーゲンのCMで、公園に設置したゴミ箱の動画があります。これはゴミ箱にセンサーやスピーカーを仕込んで、ゴミを捨てると深い穴に捨てたような効果音が鳴るものです。名付けて『世界一深いゴミ箱』です。公園に来た人が面白がってゴミを捨てるので、ポイ捨てがなくなり、公園のゴミも少なくなりました。公園の美化にはいろいろなアプローチがありますが、ゴミ箱に工夫することでゴミを捨てる行為自体を楽しい体験にしてしまうこともできます。これはanno labの作品ではありませんが、anno labが目指す、世界一楽しい街を創ることに通じていると考えています」(藤岡氏)

anno labは科学館の常設展示や知育玩具の開発、テレビCMなど、さまざまなクリエイティブ活動を行っており、2020年にanno lab初の常設美術館を開館しています。

「不均質な自然と人の美術館」のように自分たちの作品の常設美術館を建てるのもanno labの野望の1つでした。東京エレクトロンデバイスのDynaFlashにはその一端を担ってもらいました。現在構想中のプロジェクションマッピングを利用した作品でも使用できそうなので、今から楽しみです」

記事は 2021年7月 取材・掲載のものです。

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