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【注目】 AI時代の発展を支える半導体製造技術
「部品内蔵基板」とは

先端半導体の技術の中でも微細化と並んで今後の半導体性能を大きく左右する、3次元実装技術。その構成技術である部品内蔵基板について解説します。

 

  目次  

 


 

部品内蔵基板とは

部品内蔵基板は、電子部品や回路チップなどを実装基板の表面でなく、内部に埋め込むことによってデバイスの小型化とパフォーマンス向上を可能にする技術です。

部品内蔵基板にはさまざまなタイプの電子部品が埋め込まれます。その一部を以下に挙げます。

 

  1. 抵抗器(Resistors)
    電流の流れを制限し、電圧レベルを設定する役割を果たします。
  2. コンデンサ(Capacitors)
    電荷を蓄積し、電源ノイズをフィルタリングしたり、電力供給を一時的に保持するなどの役割があります。
  3. インダクタ(Inductors)
    通常はコイルの形で、磁場を利用してエネルギーを蓄積し、電流の流れに対して抵抗を提供します。これは電源管理やフィルタリングのアプリケーションでよく使用されます。
  4. ダイオード(Diodes)
    電流を一方向に制限し、電圧を調整します。
  5. トランジスタ(Transistors)
    電流のスイッチングや増幅に使用されます。

 

その他の集積回路*¹ なども基板に埋め込むことが可能です。それぞれの部品は、基板上の特定の領域にプリントされ、その後、絶縁層で覆われます。これにより、電子デバイスの製造において従来の部品を取り付けるプロセスを省略し、製品のサイズを小型化できます。

部品内蔵基板では、部品が基板の内部に完全に埋め込まれるため、空間効率が向上し、信号伝送の経路が短くなります。これにより、電子デバイスの全体的なサイズを小型化しながら、信号の遅延を減らすことが可能となります。また、電子部品の保護も性能も向上し、製品の信頼性と耐久性も向上します。

これらの利点により、部品内蔵基板はスマートフォン、ウェアラブルデバイス、高周波通信デバイス*² など、小型化と高性能が求められる電子デバイスに広く採用されています。

 

部品内蔵基板参考図部品内蔵基板参考図

 


 

部品内蔵基板の使用アプリケーション

部品内蔵基板が使用される代表的なアプリケーションとして、AiP(Antenna-in-Package)*³ があります。

AiPとは、通信用のRFチップとアンテナを1つのパッケージ内に統合した無線通信デバイスですが、表面実装型(Surface-Mount Type)と基板内実装型(Embedded Type)があります。

基板内実装型のAiPは、表面実装型と比較し、信号の短絡やノイズの影響を受けにくく、デバイスの小型化や信号伝送の効率化が可能なため、以下のデバイスで採用が進んでいます。

 

  1. スマートフォン/モバイルデバイス
    コンパクトさと高性能が求められます。基板内実装型のAiPは、小型化と信号伝送の効率化を実現し、高速かつ信頼性の高い無線通信を提供します。
  2. ウェアラブルデバイス(スマートウォッチ、フィットネスバンド、スマートグラスなど)
    小型化と快適な装着感が重要です。基板内実装型のAiPは、デバイスの薄型化と柔軟性を実現し、信号の高品質な伝送をサポートします。
  3. IoT(Internet of Things)デバイス
    IoTデバイスは、センサーネットワーク、スマートホームデバイス、産業用センサーなど、さまざまな分野で利用されています。基板内実装型のAiPは、IoTデバイスの小型化と省エネルギー性を実現し、信号の効率的な伝送をサポートします。

 

部品内蔵基板の使用例 アンテナインパッケージ(AiP)部品内蔵基板の使用例 アンテナインパッケージ(AiP)

 


 

部品内蔵基板の今後と課題

部品内蔵基板の課題としては、主に以下3点があります。

 

  1. 熱管理
    部品内蔵基板では、部品が基板の内部に密集して配置されるため、熱の発散が課題となります。高密度な部品配置による熱集中や熱拡散の制約があり、適切な冷却設計や熱対策が必要です。
  2. 製造技術の課題
    部品内蔵基板の製造には、高度な製造技術と設備が必要です。部品の実装や配線、基板の穴あけや埋め込みなど、特殊な工程や材料への対応が求められます。製造プロセスの高度化とコスト効率化が課題です。
  3. 設計の複雑性
    部品内蔵基板では、部品の配置や実装方法、信号経路の最適化など、設計上の複雑性が増します。部品同士の相互干渉やノイズ問題、信号経路クロストーク*⁴などの課題に対処するために、高度な設計手法とシミュレーションが必要です。

 

上記のような課題がありながらも、部品内蔵基板は高密度な部品配置と高集積化が可能なため高速かつ高周波の信号伝送が必要HPC(High performance computing)向けや車載向け通信デバイスへの応用が期待されています。

部品内蔵基板を採用することにより、信号の遅延やノイズを最小限に抑え、高速かつ信頼性の高いデータ転送の実現が期待されています。

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用語集

*¹ 集積回路
電子回路の機能を1つまたは複数のシリコンチップに集積して作られた電子デバイスです。集積回路では、トランジスタ、抵抗、コンデンサ、ダイオードなどの電子部品を微細なシリコン基板上にパターン化し、相互接続を行います。

*² 高周波通信デバイス
高周波通信デバイスは、高周波帯域(一般的には数十キロヘルツから数十ギガヘルツ)を使用して通信を行うデバイスのことを指します。これには、無線通信や高速データ伝送、衛星通信、ラジオ、テレビ、モバイル通信などが含まれます。

*³ Antenna-in-Package(AiP) アンテナインパッケージ
AiP(Antenna-in-Package)は、無線通信デバイスにおいてアンテナをパッケージ内に統合する技術です。従来の方法では、アンテナは別個の部品としてデバイスに取り付けられていましたが、AiPではアンテナをチップパッケージの内部に組み込みます。

*⁴ 信号経路クロストーク
信号経路のクロストークは、電気信号が一つの回路や配線から別の回路や配線に影響を与える現象です。通常、複数の信号経路が近くに配置される場合やパラレルに走る場合に発生します。

 

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