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生産現場 予知保全・品質改善

予知保全のためのデータ分析ステップとは

現在多くの製造現場では、生産性向上のために様々なデータを収集し活用することで、現在直面している課題解決や新しい課題の発見に取り組んでいます。

しかし、こうした取り組みは、従来のモノづくり現場の知識や技術が必要なうえ、ITやデータサイエンスといった新しい知識・技術も求められるため、想定以上に多くの時間とコストがかかっている状況があります。

データ活用を加速するためには、そうした現場課題の解決が強く求められています。今回は、現在注目されている「予知保全」をテーマに、データ準備・分析に基本的なポイントをご紹介します。

 

  目次  

 

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予知保全システム実現のステップとポイント

予知保全は、工場やプラントにある設備状態をモニタリングし、不具合や異常の兆候を掴み、それを元に早めにメンテナンスを行い最適な稼働状態を保つ保全の手法です。こうした業務を現場に取り入れるには、各現場でビジネス課題を整理し実施する効果を見極め、どのような体制で対応していくかをしっかり議論することが重要です。

そのうえで技術的な実現性の確認を行う仮説検証を通して、システム化構想を立て構築、運用していくことが必要です。また、予知保全システムを構築するには、抑えるべきポイントが6つあります。以下の機能が連携し、継続的な監視業務を実現するシステムの整備が求められます。

予知保全システムを構築する6つのポイント

  • センサやPLC等で設備データを集める「データ収集」
  • 各設備のデータの実情を把握する「可視化」
  • 通常状態からの変化度合を検知する「変化監視」
  • データ特性から事象を特定する「状態診断」
  • 監視結果を現場業務へ反映させる「通知」

プロジェクトステップ

プロジェクトステップ

矢印

予知保全に必要な6つのポイント

予知保全に必要な6つのポイント

 
今回は、この6つのポイントの中で「データ収集」、「可視化」「データ分析」の部分にフォーカスをあて、具体的な取り組み方法やポイントを8つのステップに分けて説明します。

データ準備・データ分析

 


 

データ準備のポイント

1. データを集める:収集

 

【1. データを集める:収集】

監視対象とする設備から、どのようなデータをどのように収集すればよいかを考えるのがこのステップです。まずは、監視対象設備について正常動作を定義することから始めます。正常動作を捉えるために適切なデータ種類(電流、温度、振動など)は何かを検討します。その上で、実際に捉えたい故障動作について定義します。故障動作も「電源異常」「摩耗」「劣化」「傷」など様々ですので、重要性の高い故障事象を選定することが必要です。収集したいデータが決まったら、収集方法を検討します。データ収集機能が設備についていない場合は、新たにセンサー等の設置を検討する必要があります。

 

正常動作を定義する_故障動作を定義する

 

2. データを見る:確認と可視化

 

【2. データを見る:確認と可視化】

収集したデータを活用する際は、必ずデータファイルおよびフォーマットが統一されているかを確かめて修正する「確認」作業が必要です。具体的には、各ファイルの行数、列数、データの型、ファイル形式等の統一です。そのうえで、エクセル等を利用し実際のデータの波形を描写しデータそのものを確認する「可視化」作業を行います。その際は、以下の3つの視点で観察することが有効です。
● 欠損、特徴、異常値の有無を確認しデータ加工の必要性を判断する
● 観察すべき対象区間とそれ以外の区間の見分ける
● 異常値や状態変化を確認し正常・異常データの比較を実施する

 

データファイル・フォーマットを統一する_データの特徴や異常値の有無を確認する

 

3. データをきれいにする:除去・分割・正規化

 

【3. データをきれいにする:除去・分割・正規化】

データ分析作業の効率および精度を向上させるためには、分析作業前に対象データをきれいにしておく作業は非常に重要です。主な手法としては、収集したデータから不要なデータを取り除く「除去」 、分析すべきデータ箇所を分割して取り出す「データ分割」があります。また、複数のデータ項目(列)があり各項目を複数次元で一度に扱う場合は、変化量が大きい項目の影響が強くなるため「正規化」を行い、一定のものさし(スケール)で計れるようデータ処理を行います。正規化方法には、「Standardスケール変換」「MinMaxスケール変換」等があります。

 

分析目的に合わせて「除去」「分割」を行う_項目数が多い場合はスケール変換も検討する

 

4. データの選択:列選択・ラベル付

 

【4. データの選択:列選択・ラベル付】

データをきれいにした後は、実際の分析に利用するデータを選択します。その際は、仮説をシンプルにするためデータ項目(列)をできるだけ絞って選択し、検証結果の理解を容易になるようにします。例えば、類似している列であれば代表列を選択することができます。また、異常と正常で波形の違いがある項目を探し、差が大きなデータ項目を選択するなどの方法もあります。その次に選択したデータに対しては、「正常」「異常」などデータラベルを付与する作業を行います。統計値データ、テスト結果等のデータファイルの場合は1行毎にラベルを付けます。センサー等の時系列データファイルの場合は、ファイル単位でラベルを付ける場合もあります。

 

分析に有効なデータ項目(列)を絞る_各データに正確にラベルを付ける

 


 

データ準備が終わった後のステップ

5. 見方を変える:特徴抽出

 

【5. 見方を変える:特徴抽出】

分析する場合、収集したデータ(生データ)のままでも特徴が確認できる場合もありますが、見方を変えることでより特徴がはっきりする場合や、生データでは確認できなかった特徴を見つけ出すことができることもあります。よく使われる方法例を以下に記載します。

 

判別制度を高めるため、ラベル間で最も違いが出る見方を探索する

 

6. データを判断する:モデル作成

 

【6. データを判断する:モデル作成】

データの判断方法は、現場課題に合わせて選択する必要がありますが、予知保全では主に、以下の3つの方法で状態判別するためのモデルを作成します。近年では、このモデル作成時に機械学習や深層学習が利用されます。

 

現場課題および、収集可能なデータの種類に応じて方法を選択する

 

7. 結果を評価する:モデル評価

 

【7. 結果を評価する:モデル評価】

汎用性が高く、精度の高いモデルを作成するためには、学習データとテストデータをバランスよく用意することが重要です。作成したモデルに対してテストデータを代入し、その結果が事実と一致するのか、異なる判定を下すのかを確認し、モデル精度や信頼性をしっかりと確かめた上で、現場での利用を検討する必要があります。モデル精度を確認する際に、「混同行列」という方法を利用してテスト結果をまとめると評価結果を考察しやすくなります。モデル評価

 

作成したモデルを適切なデータでテストする_重視する点を判断する

 

8. 現象を理解する:すり合わせ

 

【8. 現象を理解する:すり合わせ】

モデル精度の検証結果について確認でき、十分な精度であれば、実際の物理現象と突合せ、データ項目、データの特性が判断基準にどのように影響を与えたか考察し理解を深めます。状況によっては、モデル精度は高いが、本来期待していたデータ特性とは別の要因に着眼したモデルが出来上がってしまうこともあり、現場で誤判定を招くリスクも内在するため、分析結果と現場の物理事象のすり合わせは慎重に行うことが大事です。

 

データ分析で導いた結果と現場の物理事象をすり合わせて妥当性を検討する

 


 

 

半導体製造現場 人手作業をDX化するには

 

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